不味いことになった!!
時は少し遡る。
魔導図書館の根源は拡散。目的は解明にある。
その為に司書として、ただの天才であるネク・ビエンテを頭にその下に色んなろ頃から引っ張ってきた人材を使い、色んな事件に首を突っ込む。
解明するには知識は不可欠となり、秘匿される魔法は扱いにくく、けれど生命線となっていた。
「……魔法は手が出にくいな」
「……錬金術」
「なるほど、それだぁ!」
と、新進気鋭で後ろ盾もなく、ありふれた才覚とカリスマでどんどん陣営を大きくしている錬金術士。
ティアを取り込もうともした。
不穏な気配を感じ手を組みに留まったのが最近の事。
「なぁ、フォールス」
「……敵か?」
「全てを敵だと思うなよ。物騒だなあ。変わんないなあ」
何千冊と貯蔵される本や魔導書に囲まれた円形の図書館の真ん中で、腕を組み唸る。
進展がない。
ティアはほぼ独立した組織になりつつある。
その背後に統括会がいるのは知っているし、ならばとネクも力を貸している。
力関係は同等だと示さねばらないから仕方なかったとはいえ、世界勢力に小さいながらも第3勢力を生み出してしまったことになる。
錬金学園フラスコ。錬金術士の錬金術士による、錬金術士の為の教育機関。
今は生徒を集める段階だと聞いているが、その生徒たちが育ち、ティア並とは行かないまでも、それに束になって準ずられたら、魔導図書館は呑まれるだろう。
そういったタイムリミットを抱えてしまっていた。
「それもこれも統括会の陰謀か!」
力を二分化させてより1強になろとしてるのがありありと伝わってくる。
なんと狡猾か。
「ティアの右腕の女の子は、いや星読みの方が厄介か。もしかして読んでるのかもなあ。欲しいな、あの子」
「拉致か」
「しないよ!信用無くなるし!全面戦争になるだろ!」
フォールスはもう少し考えて欲しい。彼が本能のままに動いたらとっくに消されてしまう。
今1度フォールスの扱いには気を付けようと引き締める。引き締めるついでに思いついたことを話してみる。
「起源の魔法へアプローチを変えてみるのはどうだろうか」
「分かった」
違う。了承が欲しかったわけじゃない。相談したのだ。その言葉の初めの1文字を言う前に飛び出してしまった。
「ちょ…………」
何も掴めなかった右腕が空虚に項垂れる。
ダラダラと冷や汗が止まらない。
「不味いことになった!!」