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震える声で叫ぶ。
「なんでアンタがここにいる訳……!」
歴史的建築物のその地下。一般的にはない存在、無い場所で魔力の高まりを感じる両の眼で睨みつける。
その睨みつけた相手は、
「フッ!どれだけ良くしてくれても。どれだけ信頼を置かれても。それらを返そうと思っても……」
そこまで言って目を閉じる男。
色んな葛藤を一つ一つ無かった事にして。
飲み込んで、かつての自分に呑まれて目を開ける。
目の前の赤みがかった髪の少女を見て、なんて弱そうだ。そう思い、自身の底にある怒りを。
「数字の刻印には逆らえない」
まるで悲劇は自分しか持ちえない。
世界の不幸を一新に背負っている。そんな妄想でもしている男にさっきから怒り顔さえ着れない。
全ての手を。差し伸べられた優しく暖かい手を掴んでおいて。その恵まれた環境に身を置いておいて。
言い訳並べて裏切ったこの男が許せなかった!
私は友を人質にされているのに!この男は!この男は!!!
震える声で叫ぶ。
「ティアはどうしたんだ!!!リーナー!!!」
「関係ない話です」