秘密の扉
「そろそろ話してくれてもいいんじゃないですか?」
「んー、外では話したくないのよ」
ソフィーが不満げに言ってもクレアは難色示して話そうとしない。
「……黙って着いてきなさいっ!って言われて大人しく着いてきたのに」
「風属性の魔法使いに聞かれるかもでしょって事よ。はぁ、ようやく着いたわ」
ソフィーは自分の意見を主張して話すようになった。
限られた相手ではあるけれど、それがクレアにも当てはまっていることにクレアは嬉しくって、でも魔法使いとしての常識は欠けているから苦笑いしながらも説明しつつ、目的の場所にたどり着いた。
ソフィーが可愛らしくプンプンしているのを軽くあしらって路地裏の建物も前にきた。
どう見ても扉はなく壁面。
「暑さで頭がおかしく……!」
ソフィーが、口に両手を当てて驚愕した。
慌てて鞄の中になにか役に立つものがないかと探し始める。
『とめどない癒し』『極寒の雪だるま』『魂の回廊』とどれも回復向きでは無いものしか持っていなかった。
「なってないから!『招かれざる客、反転されし者。償いは無しに招かれた』」
クレアがバコンッ!とソフィーの頭をはたいて落ち着かせる。随分と豪快な落ち着かせ方だが、効果はてきめん。
後頭部を抑えて蹲るソフィーそっちのけで魔法を発動する。
レンガの壁がパズルのように動き歪な入口が現れた。
「地下に続くから、足元気をつけてね」
「わぁ、初めて見ました。『秘密の扉』」
しゃがんだまま、涙目になりながら魔法によって作られてある、光が全く通っていない空間をみて感動していた。