アイツ 素性
「ティアよ、なぜお前は錬金術師となろうと決めたのだ?」
「師匠が居なくなって、残されたのは錬金術のレシピだけだったわ。それしかヒントはない。なら、取るべき行動は自然と決まりました」
「アイツについて少し話そうか」
「師匠?」
「ああ、アイツも君と同じく異端だった。魔法は使えず、魔力は多い。そして、魔法を否定していた」
「そもそも魔法ってなんですか」
「そう言っているだけで、理解できない力だ。科学の方がまだ信用出来る」
「ヤツは創成者。造りしものだが、過程を分からないまま使っている。人類皆そうだ。人はどうして思考している?脳を使って?どのように?明確な答えは無いまま生きている。それでいいのだ。しかし、ヤツはそれが我慢ならんかった」
「もしかして、私に錬金術を教えなかったのも完全に理解出来ないことを教えたくなかったのと、使って欲しくなかったからなのでしょうか」
「多分な」
「そんなどうでもいい理由……」
「そう項垂れるでない、他にも理由はあるだろう。本人に聞けば良い。ほれ、紹介状だ」
「ありがとうございます。でも、何をすればいいかよくわからないです」
「とりあえず錬金術を磨いてみないさい。統括会の錬金術師達に教え、錬金術の理解を深めてみなさい。そうすればアイツの考えに届くかもしれん。そうすればアイツの場所に辿り着くかもしれん。お主は才はある。友人もおる。さあ、行け」
「失礼します」
「女の子に甘いのね」
「雅……いずれ力になってやれ」
「気に入ったらね」