人柱
「お主は見所があるなぁ。クンクン」
突如何も無い所から違和感もなく現れた女。
その女は赤の細かな刺繍が入った和服を着崩して艶やかなボブの髪をした人の形をした何かだった。
近くによられ顔を近づけられるとハッキリと顔立ちも分かる。スっと通った鼻立ちにニンマリと笑う口は大きく見える。不釣り合いな真ん丸なサングラスを掛けていて、本当に気味が悪い。
「人じゃ無いですよね。何故か素材扱い出来てしまう」
「ママ、この人、人じゃないの?」
「人じゃない。咲様もそうじゃれませんと……ね?」
「フンッ、咲と申す。過去に人だった時は何じゃっけな?」
「統括会でございます」
「おお、そうだった!統括会で、なんだっけ」
「色の魔法使い。緑……」
「おお、そうだった!緑の魔法使いとして名を馳せていたものだ!」
「ママ、ちょっとこの人、変」
「掴みどころのない人?ですね。空、お前が言っていたのは」
「はい、この御方です。……言い方は悪いのですが日本の為に人柱として神になられた御方です」
「…………そう」
「重く捉えてくれるのね。似た境遇をお持ちなのかしらね。過ぎた話しよ。それに誰にも関係ない話よ」