629/988
起源の魔法 『命』
時は少し遡る。ここからは悲劇のヒロインメイクをした少女の視点になる。
産声を上げた小さな小さな赤子は、誰にも祝福されることは無かった。産んだ母親も、立ち会った助産師も、全て等しく命を引き取った。
大き屋敷で、大勢の人を集め過保護なくらいに設備を整えての出産だったが、ひとつの命は全ての命を引き取った。
「ここに『命』があると聞いたけど……あるのは『死』だけじゃないか」
ピシッとしたスーツをキッチリ着こなした長身の外人。土足で屋敷に踏み入って散策を始めた。
終始不愉快そうな顔をしている。男にとっても不穏位な仕事なのだろう。イライラした態度は部下たちを萎縮させてしまっていた。
街中の一等目立つ平屋の屋敷は大きな庭、池、梅の木や、柿の木。高級車もあるのに、不自然な程に全てが枯れていた。車は錆、放置されて長い年月を孤独に過ごしたように見えるが、車の周囲は特に経年劣化は感じられなかった。
「チッ……なんだよ。起源の魔法の回収だろ!?なんでこんなことになってんだ!」