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探り合い、殺し合い
「『記憶を開示させる』」
燈火が手をスカーレットに触れようとし、呪文を唱えながら迫る。それは呪文よりも命令に近い強制力を持つ『言霊』。
「チッ!厄介な魔法ね。そうやって幾重もの人達から記憶を食ってきたのかしら。まるで魔族ね」
自身を炎の渦で纏い、燈火の手から距離を取りながら吐き捨てる。普段の斜に構えた態度はなりを潜め、感情的に映る。
「そんなに記憶を見られるのは嫌かしらね」
「平然としてられるやつの方が少ないでしょ。考えなくても分かるわ。あぁ、人の気持ちとかわかんない人?」
「フフッ、あいにく私は魔族なんでしょう?」
「殺すなって言われてるけど、無理よね」
「お互い様じゃないかしら。私、色の魔法使いなのに、このままじゃ勝てるビジョンが見えないもの。殺す気で行かないと」