『破壊・火祭り、誕』
本来、先陣を斬るのはブレットの予定だったが、近距離、物理への耐性が強すぎた。
邪龍の爪に弾かれた時、クレアちゃんとブレットは道具の所有を入れ替えた。この時点でブレットは殆ど無能になってしまった。
彼は強い。数多いる魔法使いの中で一族で分散する起源の魔法という特異を持っていたが、一族を殆ど殺したことによって力の蓄積がボスである彼一人に行っているためである。
手を貸してやりたい所ではあるが、もう戦いの次元は別のところに行ってしまった。
今のクレアちゃんはきっと、星座の位と同等かそれ以上。風の化身を召喚しきって、操っている今のコンディションならば色の魔法使いに手が届くところまで来ていた。
それ故に、その風の力を押しとどめる邪龍の呪いは想像以上のものだ。
「さて、使うにしてもタイミングだな」
ブレットが手に持つ錬金物は2つ。魔法統括会が過去に作った渾身の1品、『蘇生』とティアが怒りに任せて作ったこの『破壊・火祭り、誕』。
「ブレットーーー!!」
「なんだ!!」
はるか上空に居るのに風に声を乗せてブレットに話しかける。
なんて器用な真似ができるんだと感心しながら、叫び返す。
「後、5秒!!」
「マジか、迷ってられねぇ……」