邪龍
クレアちゃんはからかうようにブレットに聞く。おちょくるのが元々は好きだったクレアちゃんはティアと離れて同心が戻ってきていた。
「で〜、勝てるの?アンタ」
ゴツゴツとした岩場。溢れ出る溶岩。熱気で数メートル先はぼやける。足場が悪いが、旅慣れしている2人にはなんて事ない。走る飛ぶ位は簡単な事だ。
汗が止まらないし、服も汗を吸ってしまってピッチリ張り付いて気持ち悪い。クレアちゃんは溶岩地帯とは不釣り合いな白のワンピースを来てきてしまっていたので、色々とスケスケになっていて、ブレットは真正面しか向かないように心掛けていた。紳士であった。
いくら慣れているとはいえ山肌。舐めていると不測の事態に対処出来ない。足を踏み締めながら言う。
「どうだろうな。俺もティアやミホみたいなバケモンならよかったんだがね」
「それは無理よ。才能だから。私もアンタも並以上才能はあるのかもしれないけど、それ以上は無いもの」
「はっ、悲しいな」
「でもこれくらいは」
「ああ、余裕だぜ」
前方に見える山頂の火口が噴火して、現れるはドス黒いトゲトゲしたドラゴン。
ティアのミルクのように純白潔癖でも無く、ショコラのように漆黒妖艶でもない。ただ、ただ邪悪。