閑話 あの人の今
現世と裏世界の狭間。
人ならざるものが空間を支配する。
音もなく時間もなく、ただそこにある像。
石で作られた厳格な建物。ヨーロッパによく見る教会の様。
その教会の外は光の無い闇。この場にたどり着く手段は今は無い。
長い一本道の両脇には複数の、それも色鮮やかな石像が役割を待ち、ただそこにある。
一本道のさらに奥、大きな広間にはいくつかの別の場所へ行けるゲートがある。
広間の中央にはそれらを守護するかのように純白な天使を象った石像がある。
全てを覆い尽くす大きな翼。両手を組み、膝まつく様は何かに祈りを捧げているよう。
カツカツと歩く音。
「はー、やっと着いたよ。アイツには心配させ……心配してくれるかな〜。ま、色々とヒントは置いてきたし何とかして欲しい」
男は天使の石像の前まで来て杖を取り出す。
黒いローブを翻す風が巻き起こる。
『祈りを捧げよう、我は創成者なり、創りし者の命で息吹を灯せ』
薄明かりしか無かった広間は眩いばかりの光に包まれ、多彩な光が動き回る。
そして、天使の石像の頭上に、光の粒子で出来た輪ができる。
その姿は神々しく、まるで生きているかのように動き出す。
「混沌や、魔物。思考無き、生物達が終わりを引き寄せるだろう。ティア……君の血が、君自身が世界をきっと導く。『メガティフィア』君が契約するのは彼女だ」