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エピソード:リーナー
雨が体温を奪っていく。全ての悲しみが涙となって今この場所だけに集まったかの様な空模様だった。
パシャパシャと走る度に水溜まりが歌う。
ここは眠らない街。女は男を誘い、光は男を呼び寄せて財産を搾り取る。
下品な光で満ちたこの世の下層世界。
しかし、ここには世界をひっくり返し、混乱へと陥れるだけの力を持つ『異物』がある。
この街は裏世界のある場所にある。円形の街は中心部へ行くほどに高くなり、外へ行くほどに低く、場所によっては陽の光すら当たらない。
私はその光の当たらない場所に居る。勿論、任務でした。この時の私は『10』の構成員でした。
……まずはこの『10』について話さなければなりません。
私を狂わし、世界を脅かす存在。