黒の錬金術士2
「あっ、ちょっといいですか」
そう声をかけてきたのは俺が無いものを全て持って、全てを手に入れた錬金術士、ティアだ。
随分と息が上がっている。探し回ったのかもしれないな。
あの情報屋に顔合わせだけはしてもらうと連行されてきただけなので暇ではある。が、癪に障る。
「生憎、少し忙しい」
「大丈夫ですよ」
「は?」
「忙しい人を選んでませんから。我がフラスコは全て0から始めるのです。私は貴方のことはよく知らなくても、どういう状況の人かは分かりますよ」
「嫌味かよ」
「嫌味を言われたので」
「チッ、なに?」
「どうして錬金術士になったのですか?適性があったから?」
「俺が話す理由はあるか?」
「そうですか、減給で」
「待てよ!応募過ぎるだろ!」
「それができる立場にいます。運が良かった」
「はぁ、調子狂う。あー、俺はグロリアス。少しやらかしてお尋ね者さ」
「お尋ね者だった、でしょう。燈火さんに感謝してくださいね」
「本当に何もんだよアイツ。なんで錬金術士になったか、か。親が魔法使いとして平凡だった。俺が魔法を扱えるようになった時気付いた。自分に人並み以上の才能は無いと」
「それで錬金術士ですか?」
「まあ、簡単に言えばな。やっぱり魔法使いは頂点を目指すもんだ。変人以外はな」
「なんで私を見るんですか」
「さて、問題です。俺に錬金術士の適性はありませんでした。が、世間で呼ばれるのは黒の錬金術士だ。何故かわかるか?」
「魔法で錬金術士の振りでもしてるんですか?」
「鋭すぎて怖い」