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錬金術師ティアのつくる話  作者: 新規四季
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我が名は

「統括会でしたっけ、行くの面倒ですね」


見せつける為には敵の本拠地に乗り込む必要が出て来ますが、毎度毎度往復するのも少々面倒くさいですね。


だからこそ車や電車というものが発明されて文化が築かれてきたのでしょう。

何かを生み出すのにはなんかしらの感情が必要で、私は今回は怒りでした。

思い出すとムカッときますね。


「面倒って、行かない訳にも行かないでしょう。せっかく錬金術も成功したってのに」

「違うんです、聞いてください」


呆れ、馬鹿にしたように鼻で笑われましたが、それは手段を知らないからなのですよ。

結論づけるには早いとクレアちゃんを落ち着かせます。ついでに肩をポンポン2回タッチして後、軽くハグをしました。


「なに?」


ワタワタしてるクレアちゃん可愛い。腕を振り回して自分を抱きしめてそれを解いたりと忙しない。


クレアちゃんは狼狽えたように言いましたが、それが私の意見に対してなのか、はたまたハグに大してだったのかは分かりませんが、私は気にせず続けます。



「空間の同一化です」


全てを無かったことにして、指をピンと立てて私の今持てる手札を見せます。


「は?」


クレアちゃん、今度は条件反射で言っただけみたいで、頭を搔いて一拍置いた後に、「は?」と同じことを繰り返してしまいました。


壊れちゃった。

どうしよう。まぁ、いいっか。


「師匠がこの部屋に残してくれた紙にそう書いてあるレシピがありました。それを物は試しと行った時に何ができたと思いますか?」


師匠が残した唯一の物、錬金術のレシピは理解できない部分が多すぎました。しかし、図や絵がふんだんに使われていて、私がこれを作ることを見越していたんだと気付いたのです。


居なくなることも、その後の展開も全て決まっていたかのようで気持ち悪いし、あのおちゃらけた顔を殴ってやらないと気が住みませんけどね。



クレアちゃんは私の初錬金であるミルクショコラを左右の手を広げて指さして言いました。

ミルクはキョトンと首をかしげ、ショコラはパクッと指先を咥えます。

ビクッとなって慌てて手を引っ込めて自分の指がちゃんとあることを確認できて安堵していました。

人に指を指すなって教わらなかったのかな。

クレアちゃんにものを教えられる人なんてニーヴァさんくらいなものですけど、年上が必ずしも頼りになるとは限りませんしね。

私とゆっくり成長出来たらいいな。


「ミルクとショコラでしょ?」


「そうです!つまり、ミルクショコラは空間の同一化が出来ると思うんですよ!」

「理屈的には間違いじゃなさそうだけど、それってミルクショコラ達次第じゃない」


このドラゴン達ならやってくれるんじゃないかと期待したのですが、クレアちゃんは至って冷静にツッコミを入れます。


魔法使い(仮)からみても確定的なことではないらしいですね。

ニーヴさんなら別の返答が帰ってきたりするのでしょうか。居ない人はあてにできませんね。


「そうです、そこで何か案はないでしょうか。私より魔法の事に詳しいですからね」

「えー、お願いしてみたら?」


クレアちゃんは心底嫌そうな顔をした後に投げやりにそう言いました。


「なるほど!流石です!」


お願いをする。まさに完璧な手段です。


「私に甘すぎない?」


私の後ろからぶつくさ何か言っていますけどよく聞こえないので、正面のミルクショコラを撫でながらお願いをしてみます。


「ミルクショコラ!空間の同一化です!」


ミルクショコラは翼を拡げました。

アトリエいっぱいに伸びた翼が風を切るように羽ばたかせると、真っ黒な空間が生まれました。

禍々しい見た目で、輪郭は泡立っていてそれらが弾ける度に少しづつ小さくなっていっています。


「出来ましたね」

「……師匠より凄いかも」


ペタンと、クレアちゃんがその場にへたり混みながら言いました。


私はひたすらにミルクショコラを褒めまくり、撫でまくってとにかくすごいすごいと興奮しながら伝えます。伝わってくれてるのか、甘い声でクークー鳴いています。


「キャー、カッコイイですよ!ステキですよ!」


ショコラがドラゴンでもドヤ顔って分かるんだなあと感心していたらヒューッと真っ黒な空間に飛び込んで言ってしまいました。


ミルクもその後に続いて進んでいきました。クルッと首を私に向けておいでと言っているようでした。


「あ、先いかないでくださいよォ」

「って、ミルクショコラ向こうで大きくなってない?」

「ホントですね」


感じる魔力がボンっと一気に膨らんだのが分かりました。

部屋に収まるサイズだった時の数十倍。


この部屋はあの子達には窮屈なのかなぁ。


「あーあ、向こうパニックよ」

「まあ、どうでもいいです。行き方については何も言われてませんし」

「はぁ、これ責められんの私よねー」


カックンと肩を落としてとぼとぼと私の後ろを着いてきますが、歩くのが遅い!空間が閉まっちゃいそだったので手を引いて、空間の向こう側へ引きずり込みました。


なすがままでした。お手てがぷにぷにしてました。


「な、なんだこりゃあ!!」

「なんです?騒がしい……何コレ」

「え、先生……誰か!先生呼んで!門番!」

「無理だ!空間が歪んでる!?」

「龍?」

「いや、ドラゴン………」

「ドラゴンが来たぞ!」



「着きましたっ!」

「ほーら、人集まってるじゃない」

「…………我が名はティア・愛音・シャドール!錬金術師なり!」

「なにやってんの?」

「名乗りです!こんなに人がいるんですから知ってもらおうじゃないですか、あの老人が苔にしてくれたこの私の本気を」

「相当根に持ってたのね……」

「グォォォォォォ!!!」

「クゥー!!!」


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