大破の鉄球
「さて、ひと段落着いたわね。なんやかんや聞きそびれてたけど錬金物は出来たの?」
朝ごはんを食べて、軽く身支度を済ましてからクレアちゃんは疑いを向けてきました。
心外です。
私がなぜヘロヘロになっていたかなんて知る由もないのでしょうが、今後は理解を深めて行って欲しいものです。
「ふっふっふー、完璧ですよ!我ながら凄いです!」
ガタリッと音を立てて立ち上がると、ミルクショコラがビクッとしてしまいました。申し訳ないです。
私はクレアちゃんに自慢したくて自慢したくて仕方なかった事を思い出しました。
人間限界を迎えると宜しくないことをしれましたね。
「へぇ、どんな風に作ったの?」
クレアちゃんが興味を持ってくれた!私はとても嬉しく思い、手を握りしめてクレアちゃんの前に跪き、説明を始めます。
クレアちゃんは若干頬が引きっていますが、なすがまま。
「クレアちゃんが帰った後に素材を1からモノクルで見てたんですよ。すると爆発物の組み合わせが見えたんです。その他にも色々作れそうでしたけど、取り敢えず目的の爆発物に適した素材を選んで、釜へ」
あの後、素材を1から見直すと、関連性が見られました。同じ属性同士で繋げた場合効果は飛躍的に上がる。
別の素材で別の属性を掛け合わせた場合の相乗効果の有り無し。
反応しない素材。
それらを全てのパターンを計算した結果1つだけ掛け合わせる事によって全く別のものに生まれ変わらせることが出来ることに気付きました。
それが今回作った「錬金物」です。
「やっぱり、素質なのかしらね」
クレアちゃんが首を傾げて呟きます。
どうやらクレアちゃんにはモノクル越しだとしてもここまで複雑な素材の情報は知ることが出来ず、また、イメージも湧かなかったそうです。
「どうなんでしょうか。それで、創成液と溶け合って光と共に出来たのが……コチラ!」
私は起床時には必ず腰に着けているポーチから手のひらサイズの作ったものを取り出しました。
「鉄球?」
「大破の鉄球と名付けました!」
クレアちゃんのご指摘通り、鉄球です。
但し、属性マシマシの特性付与した我ながら自慢の逸品と成りました。
「大破……」
クレアちゃんはそのネーミングを復唱して「嫌な予感がするわ」とこめかみを抑えていますが、私は構わず続けます。
「この性能はですね〜…………」
飛びっきりの性能をクレアちゃんに懇々と伝えれば驚き顔が呆れ顔になり、最終的には少し怒ったような顔になりました。
なにか怒らせるようなことをしたでしょうか。
「んナッ、何てものを……」
「実演もしてあげなくては!」
私はこの時花火を打ち上げるぞーっという感覚での発言でした。
すぐ先の未来で何故、クレアちゃんが怒り気味だったのかは自身で体感することになるのですが、この時の私はいざ知らず、呑気なものでした。
「ああ、オーエン先生に同情するわ」