裏設定
「全く、いつまで待たせるんだ!あの小娘め」
捌いても捌いても湧いてくる書類にもそうだが、啖呵を切ってこの俺をコケにしたティアとか言う少女にイライラが収まらない。
「まだ、3日と経ってないじゃないですか、はい、追加の資料と報告書」
歳も歳な老紳士に見える胡散臭い男が部屋に入るなり、仕事を増やしていく。
はぁ、とため息をつき、書類を受け取り内容を流し見しつつ、提出主を見てつぶやく。
「また問題か?」
話す為の言葉では無かったが、マークヴェルチは言葉を拾い上げ嘆く様に言う。
「ええ、大地の怒りは収まりませんね」
「ええい!イライラする!なぜ我々魔法使いが非魔法使いの為に奔走せねばならん!」
そろそろ辛抱の限界だ。日頃思っている事が限界を超えて水を入れたコップのの様に溢れて止まらなくなる。
「オーエン殿、その辺にしておけ」
「……チッ。だいたい、我々が裏側なのが受け付けん!」
マークヴェルチが制止の声をかけるが、思い出せば出すほどにムカムカしてくる。
貧乏揺すりが激しくなってくい。
無意識に近寄り難い人となっていた。
「オーエン」
「世界の原理を知るのはっ……」
「熱くなりすぎだ!イライラするのは分かるが、声に出していいものでは無い」
突然の大きな声にハッとする。何を言おうとした。言っても無意味で、言葉にする必要もなければ、損失しか産まないような事を。
「すまんかった。だが世界一の大国からせっつかれとるんだ、行き来もままならんとな」
「だからと言って胡散臭い錬金術師に頼らなくても……」
「マークヴェルチ、儂も失敗だと思ったわ」
自分の勢い任せの言葉に今更ながら後悔する。無駄な事をしたと。錬金術師の奴らは黙々と設計図通りに作るだけの機械と何ら変わらない。
そんなヤツらの更に駆け出しに大人気なくも無理を言った。
ムカついたからだし、恥をかき、この世界からきえくれればせめてもの溜飲も下がるがな。
すっかり冷えてしまったコーヒーを一口口を湿らせるように飲み、マークヴェルチにも道連れとなって貰おうと書類を手に取って渡そうとした瞬間にノックもなしに下品に大きな音を立てて入ってくる。
「オーエン様!ッ、マークヴェルチ様!?」
「よいから、なんだ」
自分でも底冷えのする怒りの籠った声で舌打ちした後に用を聞く。この小間使いもどきは礼儀はしっかりしたヤツだったはず。
そんな奴が明らかに慌てて居るのだから火急の用でもあるのだろう。
「例の錬金術師が来てます!その……」
息も絶え絶えに青ざめてモゴモゴと口ごもった喋り方をされると余計腹が立つ。
「なんだ、ハッキリ言わんか!」
「ハッ!その、ドラゴンを連れて!」
「はぁ?」
ハッキリ喋らせた途端世迷言を叫びやがった。