睡眠少女
恐る恐るいつの間にか手に入れていた合鍵でアトリエの鍵を開けて入る人物が1人。
「ティアー?来たわって、どうしたのミルク?」
「クー」
「あっ、ちょっと!引っ張らないで!」
クレアが来ることを知ってか知らずかミルクが目尻を下げて懇願するように鳴くと、クレアの服を引っ張って部屋の奥へ進む。
つんのめりながら何とか服を守ったクレア。ミルクを撫でてアトリエの錬金釜がある部屋に入る。
「可愛い顔して寝てるわね……」
床に大の字で幸せそうな寝顔で寝ていた。
クレアはこんな可愛い子を置いてどっか行ったティアの師匠とやらに内心イラついた。
「すー……すー……」
「ティア、朝よ。起きなさいな」
しゃがんで揺するとむにゃむにゃ言ってゆっくーり起き上がる。
「んー?あれ?クレアちゃん……すー……」
ティアは私を見るとへにゃ〜と顔を崩して嬉しそうに二度寝した。
「こら、ねるな。……まあ、いいか。ミルクショコラは朝ごはんとか食べるの?」
「クー」
「クォー」
ミルクショコラ達にも朝ご飯という概念は有りそうだ。じゃなければ私を引っ張る意味もないからね。
元気よく返事を返してくれたのはいいけど何食べるのかしら。
「どうしようかしら。普通の生き物じゃないし、この家にあるの使っちゃっていいのかしら」
「何食べたい?って言っても分かんないか」
「クー」
一応聞くと首をなにか指すようにリビングの方へ向けた。
その先を見ると林檎やバナナが置いてあった。
「果物?」
「クーッ!」
「ミルクは果物ね、ショコラは?」
「クォー」
「一緒でいいのね」
ショコラはのんびり頷いてくれる。
2匹は主人には目もくれずリビングへと飛んで行く。
少し可哀想に思いながらもミルクショコラを優先する事にした。
「ペットみたいね。寝坊助な飼い主に変わって、今用意してあげるからねー」
キッチンに立ってコッチを見るミルクショコラに向かってそう言うと、錬金室から這って出てきたティアが呻いた。
「私にはないんですか〜」
クレアは呆れながらも笑っていた。クレアにとっては気を許せる場所になりつつあったのだった。