モノクル
「さて、師匠はレシピとか残してくれなかったんですよね。クレアちゃん、どうしたらいい?」
「魔法使いに錬金術の知識を求めないで」
私的何でも知ってる人に尋ねてみても素っ気ない対応をされてしまいました。アトリエの異次元の籠に荷物を全て入れます。入れれば入れるだけ入るのですごく便利な籠だな、と思う反面、底知れないので怖いです。
「……モノクルかければ部屋に何かあるか分かりますかねー」
「…………」
師匠が遺したであろうモノクルを掛けて周りを見渡そうとして、私を、正確には私が掛けているモノクルをじっと見ています。
「ん?どうしたんですか?」
「べっ、別に!何でもないわよ!」
どうしたのかと聞けばプンプン怒ってそっぽを向いてしまいました。腕を組んで明後日の方向に顔を向ける、どうもしてないアピールです。そこでピンと来ました。クレアちゃんはこの珍しい道具を使ってみたいんだなーと。
私はニマニマしながら尋ねました。年相応の反応は可愛いですね。周りにはこういう歳の近い子は全く居ませんでしたし、友達も居た試しがありません。生い立ち上仕方無かったとは言え、やはりお友達最高です!
「うーん?あ、モノクル使ってみたいんですか?」
「え、ええ、まあ、興味は無くはないというか、使わせてくれるなら使ってあげてもいいというか」
わざとらしく、今気付きましたというリアクションを取ると、あら失礼。使ってあげてもいいよ。なら、使わせません。
使いたいので、試してみたいので貸してくださいと素直になってくれればいいものを。
「じゃあ、いいですね」
「あっ……」
今度はこっちがプイッと素材を見始めると、後ろでか細く切ない声が聞こえてきました。流石に虐めすぎましたね。
可愛いのが悪いんです。
「ふふふ、嘘ですよ。可愛いなぁもう!」
「ぐぬぬ、あ、ありがとう……」
赤面しながらも恥ずかしそうにお礼を言う姿はツンツンとしている普段とはまるで真逆で、思わず抱きしめてしまいました。クレアちゃんも満更じゃないのか「やめ……」とか「あう……」とか可愛い嬌声をあげるので益々愛おしく思ってしまいました。
しばらく堪能して離すと、ジロっと睨まれてしまいましたので、スンっと態度を落ち着かせてモノクルに話題を移します。
「どうですか?面白ですよね」
「へぇ、凄いのね。全ての物に属性があって、レベルがあるのね。ん?ティア、コレかけて素材見てみなさい」
「え?う、うん。って、あれ〜?」