化け物たち
飛び交う札。
的確に私達に目掛けてくる。
まともに相手をすると痛い目に合いそうです。
指示を出そうとしたけれど、やめる。
シーフォートは教えを守り、姑息に、狡猾に。
電撃のサークルを作り、守りに入った。ように見せ掛ける。
陰陽師達は電撃のサークル目掛けて札を投げる。
1枚は地面に当たり、地面を突起させ突き刺すようにサークルに当たる。
「なるほど、威力は高いですね」
1つ試してみましょうか。
私は三重詠唱を始める。
一度に3つ同時に魔法の呪文を口にする。
バラバラの呪文が重なれば何を言っているか分からないが、私の脳が理解していればいい。
水を地下から地面へ染み出す魔法。
熱を与える魔法。
それらを拡散する為の弱い渦を風邪で起こす。
一つ一つは統括会で初めの方に習う事ばかりだ。
何も難しいことは無い。
足音がピチャピチャと鳴り、地面が泥濘む。
時に足をすべらす陰陽師さえいた。
地面に触れる札はこれだけで無力化することが出来た。
地属性だろうか、なんの反応も示さなくなった。
次に湿気。
札が真っ直ぐ飛ぶ数が減った。
手練ではないとこの中で術は行使出来ないのだろう。
私のように状況を作る術は無いのかもしれない。
最後に視界を冴え切れば、あちらさんは混乱した。
シーフォートはよく分かってくれた。
この状況下、陰陽師達は火を打ち込むようになってきた。どうやら札に魔力を込め、撃つらしい。
魔法使いと同じ原理だ。
シーフォートは低級魔法である火の玉を無差別に放つ。
彼は今敵陣のど真ん中だろう。
シーフォートの意外な才能。ステルス行動だ。
姿を消している訳では無い。
世界は自然で満ちている。その自然に深く寄り添っただけ。
それだけで視認が難しくなった。
そうして容易に懐へ入り込み火の玉を放つのだ。
フレンドリーファイアと勘違いて止めろ止めろと騒いでいる。
「本当に姑息になっちゃった……」
「何を嘆くことがありますか。彼はこうすることでかなり強者へ近づいた」
「下郎のする事よ。でも凄いわ」
「お褒め下さり恐縮ですが、そろそろ奥の手を見せていただけませんか?」
「え?」
「言っていたではありませんか。奥の手を出すと」
「聞こえてたの!?あの時あなたたちは……!」
「優れた風使いの耳は千里まで届くんですよ?覚えておきましょう」
「は、はぁ!?……だからか!リーナーが不用意にお喋りしない意味がわかったわ!」
「勉強になりましたね。因みに多分ですけどこの会話とか、戦況はクレアさんは把握出来てますよ」
「本当に化け物」