私達を縛るものはありません
「素材とかのアテとかちゃんとしてるのよね?」
丘のようなこの場所では、芝で覆われている場所もあれば、岩で埋め尽くされているところもあります。
まるで区画整理されているよう。いえ、実際にされているのでしょう。なんと言っても師匠が創ったとされる場所ですから。
池から見て右手は芝。左は岩。正面には森……というには少ない木々が生い茂っています。
これ程自然に満ちていて、空気も表世界とは比べ物にならないほどに澄んでいますが、生き物の気配は一切しません。
クレアちゃんはそういった不自然さに不気味さを感じているようです。
「はい、大丈夫です。クレアちゃん!」
「た、楽しそうね」
不安げなクレアちゃんの気持ちはイマイチ理解し難いのです。
私は見た事のない景色に感動していました。
そしてこうも思います。
「夢物語を体感してるんです!」
「そんなにお気楽な世界でもないわよ」
ワクワクしている私を冷めた目を見つめて、ため息をついています。
気難しく考えすぎたと思うのですが、これが経験値の差と言うやつでしょうか。
「お気楽にしましょう」
「そんなこと言えるのは圧倒的な実力者だけよ」
私がそれでも楽しみを優先した言い方をすれば、クレアちゃんは怒ったように言います。
ならばと更に言い募ります。
「なら、なればいいんです!」
腰な手を当てて自信を持って言う。
「簡単に言ってくれるけど」
「私達を縛るものはありませんよ!」
目を見つめて葛藤の見えるその目をジッと。ただ、ジッと信じて見つめれば俯き、顔を再び上げた時、諦めと覚悟のこもった表情をしていました。
「……ええ、やってやりましょう」
「ふふ、その意気です」
「結構集めれましたかね」
色んな物を集めましたけど、正直素材となる物とそう出ないものが混ざっているかもしれませんがとにかく集めれました。
「ねぇ、身軽そうだけど回収したのって、ちゃんと持ってるのよね?」
「持っているというか、転送したというか」
腕にいっぱいの薬草を抱えたクレアちゃんが怪訝な顔をしています。
両手いっぱいに抱えてるクレアちゃんはとても愛らしく気付いた時には抱きついていました。
ギロっと睨まれて渋々離します。
嫌われるのも、疑われるのも癪なのでアトリエに直接送ったことを言います。
クレアちゃんは納得したような顔をしつつも、そのような魔法を知らないのか私個人の技能なのか、能力なのかが興味あるようです。
「創成術?」
「ミルクショコラの副産物なので…………創成術ですね」
自分でもよく分かってない事なので恐らくと言う枕詞が着きますけれどね。
「謎ばっかだわ」
憮然としないクレアちゃんなのでした。