モノクル
「付けてみたら?」
私がモノクルを観察したり、あちこち指で弾いたりして確認していると、クレアちゃんは性能面が気になるのか催促してきます。
事実、どんなものか、どんな性能か、そもそも使っても問題ないかなどの疑問は出てきます。が、クレアちゃんの顔に出ている『使ってみて』の声には逆らえるはずもありません。
「そうします。な、なんですかこれ!」
「どうしたの!?」
「すごい情報量です」
「……どういう事?」
メガネ越しの世界は脳に直接その物質のデータが刻まれたかのように記憶として分かります。
この辺の勉強を一切していない私が目で見て全て理解出来てしまう。
末恐ろしい。勤勉な人よりも、道具ひとつで知識を上回ってしまう。
今ならどんな錬金術でも出来てしまいそうに錯覚しそうになる。
「この辺一帯は素材、材料の製造畑みたいな事だったのです。モノクルを通すとその物質がどんな属性で、どれほどのレベルが分かります」
その辺の石ころも、モノクルを通して見ればぼんやりとオーラの様な色がわかる。
オーラの色は赤、即ち火属性に当たるのだろう。
レベルに関しては分かりづらいですが、数字が出るのでそれがレベルなのでしょう。
疑問は尽きませんが。
「レベル?」
「えっと、例えばこの右手の石と、左の石。違い分かりますか?」
クレアちゃんがそんなものは存在しないと顔に書いて聞いてきます。
あ、もちろん本当に顔に書いてるわけじゃないですよ。
私だってレベルなんて見て分からないもの信用できませんが、モノクルを通して見た世界では素材の善し悪しとレベルが、見えてしまっています。
「同じに見えるわね」
クレアちゃんはじーっと、見比べてそう言いました。
私もモノクルが無いとその辺の石ころにしか見えません。
でも、このモノクルを通すと、
「右手のこっちの石は、クリスタルスノーという珍しい鉱物らしいです。えっと、魔力を吸収する性質がある?のかな?で、レベルが50です。多分」
「多分……。へぇー、左は?」
「ただの石です」
しばしの沈黙の後でクレアちゃんが1歩後ずさって言います。
「それ、凄いものじゃない?」
「師匠が残してくれたんでしょうか」
「状況的にそう捉えるわよね」
「……気に入りませんね」
居なくなることを前提とした感じ、嫌ですね。




