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錬金術師は危ない存在だ
トーワリスはティアのことを崇拝していた。
ただ、ただ時が流れるだけの人生に突如現れた新星。
適性があって錬金術師になったものの何故か差別的な意志を受ける日々。
錬金術師は必要不可欠なのに派手さは無く、評価されずらい。
そんな世間一般の評価を一瞬にして瓦解させ、錬金術が全てを凌駕するがの如く躍進を始めた。
かっこよかった。あれを見て憧れるなと言われ納得するのは無理だった。
裏世界でも特に危険視されるドラゴンを2頭も操り、彼女の作るただの鉄球は雲をも切り裂いた。
私は必死に、今まで以上に頑張った。
ありとあらゆる錬金術師の本を読み漁り、実際に調合を試したりもした。でもダメだった。
錬金術師になれる才能はあったが、その錬金術師としての才能は弱かった。
それでも諦める訳には行かなかった。
いつからか統括会全体に不穏な空気が流れた。
秘匿されていた存在が明るみに出たからだ。
『創世術師』
錬金術師の最果て。錬金術師の成れの果て。
世界を終わらせる災厄。
あの世界樹の一件はバランスをいとも容易く崩した。
誰かが言った。
「錬金術師は危ない存在だ」