レッドネッサ・バフォーム
なにか暗い顔をしているように見えた。なので、探索という名目で話を聞いてみたら、案の定なにか抱えてしまっていました。良くない。これは良くないですね。
更に具体的なことを聞きました。
曰く、魔法使いであり、そうでなくなった一族。
「話せば長いんだよな……」
バフォーム家の成り立ちと、崩壊と、再興のお話。
時は遡る。その時はまだ、魔法使いは生活の一部として受け入れられていた。
岩山に面した集落である日一人の子が産まれた。
その日は嵐だった。海は荒れ、風が荒ぶり、大地が揺れた。
雷鳴が轟き続け、夜なのにずっと明るかった。
そんな日。
「くっそ、なんて天候だよ!!」
白衣を着て、やたらと綺麗な手袋をしている男がいる。
彼の着ている白衣や手袋。その他の道具は錬金術によって作られたものであり、人の技術ではまだ到達出来ていない代物だった。
煉瓦造りの屋敷の一室、妊婦が脂汗をかきながら出産を行っている。
「魔力の譲渡!ターキナ様、あと少しです!」
「ふぐううう!!」
ターキナと呼ばれた女性こそ、全ての始まりの根源であった。
息を吸って、吐いて。その繰り返しの果てにようやく赤子は産声を上げた。
その瞬間、今までの世界の終わりのような悪天候はピタリと収まり、朝の陽射しが生命の誕生を祝福した。
「なんてタイミングだ」
「まるで奇跡」
「産まれたか!よくやった、よくやったぞ!ターキナ!」
「ええ、顔を見せて」
「ええ、元気な男の子ですよ」
「ねぇ、アナタ」
「うん、どうしたんだい?」
「この子の名前」
「降りてきたんだね?」
「はい。奇跡の赤、レッドネッサ・バフォーム」
かくして、レッドネッサ・バフォームはこの世に誕生した。この男こそ、バフォーム家を魔法界にて最強の一角へ押上、かつ、唯一無二を成し遂げた後呪われた男である。