情報屋
「邪魔するわよ」
クレアちゃんが帰ってきてくれたので、部屋の中の物色を止めて、玄関へ顔を出します。
「あ、帰ってきました〜!」
「う、嬉しそうにするんじゃないわよ!」
何やら大きなカバンを背負って来ています。
私が錬金術師として無駄なばっかりに、あちこち走り回ってくれたと考えると頭が上がらないですね。
「聞きたいことあったんですよ」
「なに?」
「ダージリンでいい?それでね、クレアちゃんはどうやってここに行き来してたのかなって」
色々と起きすぎて、疑問ばかり増えますが、1番に気になった事があるのです。
この家は隔離されていると言ってもいいほど、他の家とは離れています。
「どうやってって、え?」
「ど、どうしました?」
「距離を縮める魔法発動してるじゃない」
当たり前の様に言われることが多いですね。
自分が当たり前だと思ってることも、相手はそうじゃないことを知って欲しいものです。
魔法とは無縁と思って生きてきたので、未だに自分が飛んでもファンタジーの世界に生きていることは実感しにくいです。
師匠の創成術は別ですけどね。
「なんですかそれ」
「……今は置いときましょう」
唖然とするクレアちゃん。硬く目をつぶってそう絞り出すように言いました。
悲しい。
「またですか。そのうち忘れてしまいます」
「なら、その程度ってことよ。それより、爆発系といえば、火の魔法かと思ってね、スクロールと、火属性の魔石とか持ってきたわ」
「ほへー」
クレアちゃんが完璧で辛い。
こうも関連する物とか思いついて、持って来れますね。普通、思いついただけで終わりますよ。
「気の抜けた返事ね」
「もうそれでいいのでは?」
「バカね、なんの威力も無いわよ」
半分本気で言ってみたり。
クレアちゃんは手を広げて苦笑い。
「その釜で、さっさとなんかやりなさいよ」
釜を指さして、椅子にドカりと座り込んで頬杖を着いて、ゆったりしていますね。
口調こそは素っ気ないですけど、心配してくれているのは伝わります。
「やってみます!あ」
「今度はなに」
「いやー、クレアちゃんが出ていったあとに来客があったんですよ」
「……すごく嫌な予感がするわ。続きをどうぞ」
クレアちゃんは顔を引きつらせて私に続きを促します
。
「ちっちゃな女の子で、深々としたローブを……」
「!!……依頼とか受けてないわよね!?」
その人物の特徴を言っていくうちにクレアちゃんはみるみる顔が青ざめていき終いには立ち上がって私に詰め寄りました。
「受けました」
「このっ、バカー!その人は情報屋よ!」
「じょーほーや」
「彼女の一言で、全ての地位が無くなることもあるわ」
「凄い人なんですね」
「そうよ、そのすごい人に目をつけられた挙句、依頼とか。はぁ、アナタ、トラブル続きすぎるわ」
「……一緒に頑張りましょう!」
クレアちゃん、頼りにしてますからね。
クレアは無知で無茶苦茶なティアに振り回されっぱなし。
それでもティアから距離を取るのではなく、ティアの舵取りを考えた。
「……はぁ、目を離せないわね。ここに住む……んんん……」
無知で無茶苦茶で、一生懸命。
クレアは一抹の不安は有りながらもティアとのパーティを大切にしたかった。