梅、取引、闇
「仕切り直して、梅ちゃん。燈火の事を話してくれませんか?」
「それについては私も違和感があるわ」
「ええ、何か食い違いがある様に思えますね」
「つっても燈火は情報屋だろ?自分から言うまで誰も俺達は分かんなかったんだ」
「でも、梅ちゃんは燈火さんを知っている様」
「……こんな筈じゃなかったのに」
「え?」
「先ずは私の事から話しましょうか。その方が早い」
日ノ本梅、陰陽師。
日本の影であり、柱である異能者の集団。
日本は世界と比べても怪異や、魔物などの目撃情報が多い。
世界の魔法使いや、それに準ずるもの達が情報を規制しているのにも関わらずだ。
梅は幼い頃から戦う術を叩き込まれて来た。
そういう一族だからだ。
しかし、一族で初めて魔法に適性があった。
「だから、私は統括会へ入って情報を送っていた。まあ、殆ど大した事ない事だけどね」
「おおー、スパイだ」
「そう、ね。私は陰陽局に属していてるもの。でも少し揺らいだわ」
梅は統括会の情報を流していた。
そこには特異だが、取るに足らぬ存在として錬金術師も情報を流した。
しかし、蓋を開けてみればどうか。
ティアと名乗る錬金術師が台頭して一変。
不遇だった錬金術師の評価はガラリと変わっている。
「そういえば、錬金術科に編入が増えたって聞きました」
「ティアのせいね……この規格外を標準とでも勘違いしていたら痛い目見そうね」
「まあ、それは誰もが見た痛い目ですよ。陰陽師の力は世界から見たら最早ないも同然。ただ二人を除いては」
「それが燈火さん?」
「そう。だから、分かる?」
「……陰陽師のトップが私たちと知り合いなのがおかしいと?」
「ええ、だから、その。付けていた」
「へぇ、全く気付かなかったな」
「ふふ、陰陽師は影だもの。さて、私の立場は危ういんですよ。こっから先話すとなると安全が保証されないと、ね?」
「ふーん、めんどくせぇ。殺すか?」
「ダメですよ、ブレット。血で汚れます」
「そ、そこじゃないと思うんです!」
「取引のつもり?」
「私はティア達が知りたいことを話す。ティア達は私を守る。ほら、win-winじゃない」
「うーん」
「分かった、最後にこれを判断材料にしてちょうだい」
「何?」
「陰陽局は1人の女の子を攫った」
「魔法使いの世界じゃ珍しくもねぇ」
「ふふ、それが青の魔法使いだとしても?」
「色の魔法使いだって!?」
「……青の魔法使い」