謎の頼み
クレアちゃんが出ていって割とすぐの時。
ドンドンと玄関のドアを叩いて、訪問を知らせてきます。
ここへまともに玄関から来客が来るなんて、珍しいこともあったものです。
「ん、誰でしょうか」
「あ、アナタが錬金術師さん?」
ドアを開ければローブを深々と被った背の低い方が居ました。
声の高さから、女性だとは分かりますが、顔は伺えません。
「暫定?」
「……まあ、名称はなんだっていいの」
聞かれたことには答える主義。
錬金術師かと問われれば微妙なところなので、曖昧な返答になってしまいます。
すると、彼女はなんだっていいと言います。
錬金術師を尋ねてきたように思えたのですが、違うのでしょうか。
立ち話もなんですので、リビングへ案内します。
「はあ、なにか御用でしょうか。街から結構遠い場所なのに」
自慢ではありませんが、師匠のアトリエ兼自宅は田舎と言っても過言ではないほど周りに建物はありません。
近くにあるのは、農場と、協会。
電車に乗ろうとすれば、日に数本のバスを待たなければなりません。
一般の人は。
「ほんとよ、大変だったわあ。あ、それで、頼みたいことがあるんだけど」
「聞くだけなら……」
「彼にプレゼントを渡したくって、あ、もちろん魔法使いよ。でね、幻想的な物を送りたいの!」
彼女は私が話を聞いてくれることで、声を1段階上げて、嬉しそうに話します。
プレゼント、ね。嬉しいものよね。私は名を貰った。
「はぁ、考えときますね」
少しだけ気負ってしまいますね。
返事もやる気のないように感じてしまったかもしれません。
何がいいでしょうか。魔除けとかですかね。
「また近いうちにここへ来るから、よろしくね!」
あれこれ考え始めたら色々と楽しくなってきたんですが、彼女は元気ハツラツで帰っていきました。
ちゃっかり、紅茶は飲み干して。
「……嵐のような人でした。名前も聞いてませんし。とりあえず錬金術をできるようにならないと」
彼女が出ていったあと、どこかに隠れていたのかショコラとミルクが私の両肩に止まりました。
「君達は、人見知りなのかい?」
「クォーン!」
「キュー……」
返事してくれても何言ってるか分かんないですからね、とりあえず頭を撫でてあげます。
私も私で、やる事が出来ましたし、頑張りましょい!