創世術師は気味が悪い
しかし、ティアとその一味は敵に回さず済んで良かった。
ティアのアトリエを出て、しばらく歩くと土塊が崩れる様ににも無くなった。
賢者による魔法だろう。
賢者は意識を部屋の中の自分に戻す。
机を2回、トントンと叩いた。
「ふぅ、錬金術師専用の学校か……」
ティアの提案は叶えてやる事自体は簡単だが、1個人に肩入れをし過ぎるのも良くない。
しかし、先日の功績を無視する訳にも行かない。
面子の問題。
クレアと言ったか、あの小娘は自分より2回りも大きい男を吹き飛ばした。
吹き飛ばされた方はバフォーム家の問題ありの跡取りだったな。
蹴り飛ばす前に、杖を一瞬にして顕現し、速読呪文で足に風邪を纏わせていた。
それによる破壊力の向上は理解出来るが、発動が速すぎる。
それをいとも簡単にガードしたバフォームの小僧も、腐っても跡取りと言った所か。
この2人だけじゃない。
バフォームの小僧が吹き飛ばされる場所が最初っから分かっていたかのように、いそいそとその場所にある物、人を移動させていた少女。
家が傷つかない様に即座に簡易結界を貼ったのはあの長身の男だろう。
この男もやり手だった。近い内に位も上がるだろう。
あの中で異端だったのはもう1人の女の子だ。
気付かれん様に一瞬しか心眼を使わなかったが、起源の魔法を持っていた。
それに、魂の形が歪だ。まるで、二つに裂かれたいるよう。
「まぁ結局、ティアに比べれば全員可愛いもんよな」
ティアは終始手を使って虚空を操っていた。
あの場でドラゴンに睨まれている感覚がずっとあった。
「もし、儂が魔法を使ったら何かしら抵抗の手段があったのだろうな」
末恐ろしい。
幾つもの修羅場をくぐってきた。
時には死にかけたこともあった。
そして、今日。何故かその感覚をずっと味わっていた。
「やはり、創世術師は気味が悪い」