クレアとミラクル
「そういえばモノクルも預かったままだったわ」
クレアはすっかり首飾り代わりになっている、モノクルを手に取った。
先程ティアが渡して来た錬金物を見る。
ステンレスの箱を振るとカラコロと音が鳴る。
開け口が有り、そこを開け傾けると1cm台のものが出てきた。
「飴?」
「それは神罰の飴だ」
「ぶ、物騒な名前ね……」
「己の名前に呪いをかけた錬金術師がゼロから作った物だ」
「それって……!」
「言うか迷った」
「……そうね、難しい」
クレアはティアが自分の師匠をなりふり構わず探しているのを知っている。
他の誰よりも深く、知っている。
アトリエの机の上に乱雑に散らかった本はどれも錬金術の本だった。
読書が苦手と言っていたのにだ。
何十冊と読み漁り、どこかにヒントはないかと探しているのを知っていた。
その、ティアがこのことを知ったら。
きっと、ミラクルを問い詰め、ミラクルの記憶の場所を虱潰しに歩く回るだろう。
「……ミラクルは一体何者なの?」
「創成物」
「……そう。ねぇ、この飴ってどういう効果なの?」
「食べれば分かる」
「ふーん」
「おお、読める……けど気持ち悪い」
日本語自体は読めないのに意味が分かる。
文字が上塗りされている様な錯覚。
「未完成品でした」
「くっそ……」