梅とブレット
「ねぇ、聞いてもいいかしら」
買出し班となった梅とブレットは近場のスーパーへ電車で向かった。その途中、梅がブレットに尋ねる。
「なんで、ティアに付いてるか、か?」
「え、ええ、そうよ。だってアナタは、いえ、他の人たちも徒党を組む必要が無い」
聞きたいことを先に言われ、弱冠たじろぎつつも、思ったことを口にした。
日ノ本梅は単独行動で、依頼をこなしてきた。
その方が評価され、また、報酬なども自身だけのものになるからだ。
梅からみて、ブレットは申し分なく強いと感じている。だから分からなかった。
「頼まれたからだ」
「頼まれたから?そんな理由でアナタ自身を落とすの?」
「……まぁ、初めは不服だったさ。慢心もあった。俺はバフォーム家の人間で、時期。、長だ」
「心変わりがあったと?……この路地を抜けるわ」
梅達は人通りが少ない裏路地を進んでゆく。
「狭い世界を見ていた。そう感じた。でもって、そう感じさせた俺らのボスは素人だ」
「でも、ティアは偉業を……いえ、そうか、あの時はまだ何も知らない状態だった?」
「ん?ティアを知ってたのか?」
「……白状しましょう。監視の命令があったの」
「陰陽師のジジイ共か?」
「そうよ、クソ野郎どもでも、私はそこでしか暮らせない。なら、従わざるを得ないの。力が弱いから」
悔しそうに呟いた言葉にブレットは何も返さなかった。
ただ、背中を叩き、ブレットは胸を張った自身満々な姿勢を摂る。背筋を伸ばし、胸を張る、顎引き、ニヤリと不遜に笑う。
背中を叩かれた梅はよろめき、文句を言うつもりでブレットを睨みつけながら見たが、その姿勢、雰囲気に飲まれた。
あのメンバーの中でなぜ1番強そうだったのか分かった。
姿勢、仕草、表情。
たったこれだけで、手の内も見せずとも人を魅せていた。
結果、ティアを守ることも出来るのだろう。
その姿は決して屈指ない強い意志を見た。
梅はつまらなそうに、不服を感じさせる様な表情をするも、ブレットに習い姿勢を正す。
そうすればブレットが吹き出し、梅もつられて笑いだした。