何も起こらないはずがない!
「呼び出されて何かと思えばお前か」
私たちの後ろからそんな風に言いながら、面倒くさそうにストラウトさんが登場しました。
私の顔を見て大きなため息を吐きましたね。
全く心外です。まるで私が悪いみたいじゃないですか。
「あら、また会いましたね」
「また会いましね、じゃないよ。全く、面倒ばかりかけやがって」
「それはどうでも良いんですけど」
面倒なのは私のせいじゃないと思ってるので、それは置いておいて、気になる事を訪ねます。
「いや、良くないわよ」
クレアちゃんが頭を抱えてそう言いますが、さっきからその仕草多いですね。後で薬でも調合して上げましょう。まともな調合したことないですけどね。
ではなくて、
「統括会ってロンドンにあるんですか?」
「何を言ってるんだ?」
「本当にこんな何も知らないガキがあの人の弟子なのか!?」
わあ、そのアホを見る顔は堪えますね。
ストラウトさんは、たまたま大きなため息をつきます。
老人はビシッと私を指さして、ストラウトさんに怒鳴っています。
ビクともしてませんが。
「オーエンさん、それは本当だ。諦めてくれ。それでなんでお前はここがロンドンだと思ったんだ?」
「いえ、なんでって、ロンドンからでてないからですけど」
途中変なとこ行った気はしますが、景色は日本とは似つかわしくないもので、物珍しさから記憶に強く残っていますから、間違えはないと思うのですけれど。
「クレア、お前、ちゃんと説明したのか?」
「今からしようとしたところで、この状況よ。同情が欲しいわ。ストラウトさん、本当にティアは、その……」
「ああ、あの人の弟子だよ」
「いえ、弟子ではなく」
弟子、と言われ物凄い違和感と言いますか、拒絶反応といいますか、気持ち悪さが凄いので間髪入れず否定します。
なんにも教わってないですしね。
「ならなんだ」
「娘?」
「なんで疑問形なんだ」
「複雑な事情がありまして」
あの時の師匠はカッコよかったなあと思い出し、本性をみて落胆しましたっけ。
「だろうな。で、オーエンさん。コイツに許可証をくれないか?」
「なっ!いくらアンタでも流石に無理だ!こんなな得体の知れないガキ。面倒を起こされたら俺の責任になっちまう」
「なら、こういうのはどうだ?」
「なんだ?」
「なりそこないとはいえ、コイツは錬金術師だ。なら、決まっているだろう。調合だよ」
「なるほどな。なら、爆発系を持ってこい。俺の眼鏡にかなったら許可証なり、なんなりくれてやる」
老人が、イヤーな顔で偉そうに言いますが、なんなりくれてやるとも、言いましたので、チャラにしましょう。
「言質取りました」
「うっ……」
ニッタァ、と微笑んで差し上げれば、老人も笑顔を返してくださいます。悪い人じゃないかもしれませんね。
「行きましょうか、クレアちゃん!全てを破壊する爆弾を作りに!」
クレアちゃんの手を引いて来た道を引き返します。クレアちゃんが何かを言ってる様な気がしましたが、なんやかんやで手を繋いで歩いてくれるので、クレアちゃん大好きです。
頬を赤くして小声で文句を言っても、満更でもなさそうなのがポイント高いですね。
そして、遠ざかる背中を見ながら、ストラウトはオーエンに話しかける。
「おい、オーエンさん」
「わ、分かっておる!使うのはこっちだ」
ギロリと睨めば、焦ったようにそう言う。
オーエンもこんな面倒事になるとは思ってもなかっただろう。
ストラウト然りだ。
「頼むぜ?一つだけ教えてやろうか。コレは俺も眉唾だが」
「なんだ」
「ティアのヤツ、何も知らない状態で創成術を使ったらしい」
「なにを馬鹿な事を」
確かに馬鹿げた話しだ。もし、それが実際に起こったならば、誰だって夢の創成術が扱えることになる。
いくら、ストラウトの言葉と言えど信じる根拠は何もない。
「ああ、言い忘れてたな。ティアは魔力がない」
「なにを、馬鹿な……」
「そうだよ、ここに来れるはずがないんだ。コレは俺の名前をかけてもいい」
「おい、本当に」
「さあな、何せ俺もアイツの錬金術は初めて見ることになるからな」
「なんで楽しそうなんだ!」
「楽しいだろ、才能が天を目指して動き出したんだ。何も起こらないはずがない!」