お話2
あの日、他の魔法使い達は権利や、魔法使いの法によって直ぐには動けなかった。
賢者は急いでいた。他の組織と迅速に会議を行おうとした。もし、あの日、会議が行われていたとして、実行に移せたのは何週間か後になっていただろう。そして、そうなっていた場合、被害は考えたくも無い事になっていたかもしれない。
「でもそれって私悪くない」
「そう、そこがネックなんじゃ。誰も罰せれず、褒賞も与えれず、ただ独り歩きする名誉と名声」
「そんなもの見たことも聞いた事も無いのですが」
「独り歩きしておる。現に我が統括会でもあれ程下に見ていた錬金術科への編入希望が後を絶たない」
「やりましたね!」
「そこは、まあ、まだいい。問題はお前さん自身だ」
「私?」
「なんというか、中立に近いからこそ誰も手を出さないし、誰もが手を出すと言うか、うーん」
「つまり?」
「ティア・愛音・シャドールという1人の人間が、1つの組織として認識されている」
「益々分からないですけど……」
「少し違うが、お前自身が国の様な扱いになった」
「???」
「ティア、そもそも魔法使いってどんなものだと思う?」
「え?魔法を使う?」
「なるほど、ピンと来ないのも仕方ないわ。魔法使い、及びそれに準ずる者は何れにせよ何処かしらに所属しなければならない」
「どうしてですか?自由は無いのですか?」
「えっと、ティアは日本に生まれたわよね?確か」
「はい、なんなら皇族の血が混じってます」
「うん、その国に生まれた人はその国の人でしょ?例えば日本人、アメリカ人みたいに」
「はい」
「魔法使いにもそういうのがあるのよ。どこの国の、どう言ったところで魔法をならいました。では、この国で魔法使いとして生きますって感じ」
「俺達はそう生きてきたからなんの不思議もないんだけど、たまに居るのよ。突如魔法使いに身を置かざる得なくなった奴は」
「私みたいに?」
「ええ。そういった場合まず登録をする」
「しないと?」
「魔法を使った瞬間捕まるわ」
「……でも私」
「君は彼の弟子として登録されていたのだよ。ウチに」
「私の知らない事実がまた判明しましたね。ん?なら私は統括会の人間では?」
「本来は。奴は厄介な契約を残していきおったのだ!」
「聞きたくないですね」
「錬金術を使った瞬間、その身はどこにも属さず、誰の介入も許さないと言うものだ」
「ややこしくなってきました」
「かなりレアなケースですよ」
「かなりどころか初でしょ」
「統括会はこの契約を守らねばならない。つまり無所属のお前さんは魔法を使ったとしても誰も咎めれず、また、統括会は無条件でティアを守らねばならん」
「お、おお〜。この契約を解除したい?」
「……そうじゃ」
「いやだ」
「……ふー。何故じゃ」
「勝手がいいですし。まあ、私からも話があります。それが解決に繋がれば良いのですが」
「離せ」
「では」