魔法使いミホ
「点と点を結んで……遠い……」
「ハッ、何でしょうか、この魔力は。吸われる?ここで?」
「ソフィー、特に何も感じない……ことは無いわね。微弱だけど吸われてる」
「急ぎたいけど……」
「分かってるっス!私は記憶もなくして、指して強くもないッスけど、それでも優しくしてくれた皆さんに感謝してるんすよ」
「ミホさん、私はずっと疑ってたわ」
「……燈火さん。やっぱり信じられないッスよね」
「今までわね、今はもう違うわ。記憶を無くす前の貴女はどうか知らないけど、今の貴女は信じる価値がある」
「……うぅ、ミホさん?」
「ティア!起きて大丈夫なの!?」
「へへ、ミホさん。信じてる」
「ここまで言われたら、やるっきゃないっスね!」
ミホさんは目をつぶり、今1度気合いを入れ直した。
土壇場で、不可能とされた魔力譲渡と循環をやってのけた姉妹が居たり、的確な指示で負傷者すら出さない優秀な司令塔が何人もいたり、いがみ合いから一瞬で仲間に引き込む凄い人もいる中で、何も出来てない。
おんぶにだっこだ。
でも、みんなの役に立つチャンスが来た。
返す恩を返せる時が有るのなら、それは今だ。
突き出したミホさんの杖は構築しきれない魔法のせいで杖の中で留まってしまっている。
杖自体が膨れ上がり、ヒビすら入る始末。
それでも構わない。今ここで限界を迎え、今後魔法が使えなくなってもいいとすら思う。
だから。
「私がやらなきゃ行けないんだ!」
杖のヒビは大きくなり、表面が弾け飛ぶ。
それでも魔法の構築は解体されていない。それどころかとうとう宙にゲートの渦ができ始めた。
ミホさんの杖はミホさんが本来の力を発揮したことで、杖自体の本来の姿を取り戻した。
群青色のどこか時計の針を思わせる形へ。