新体制
「ええと、初めまして。私はティア・愛音・シャドールです」
威圧的で嫌ですね。なので、簡潔に済ましました。
誰か知りたいようでしたから、お名前を。
「ん?続きは?」
「続きって何かしら」
「ほら、魔法使いとか、アイツの弟子なんだろ?錬金術師で何が得意とか。自分の事だよ」
ストラウトさんは私に何かしらの肩書きを求めている様ですが、生憎と精々が師匠のお手伝いですからね。
「えっと、それは困りました。私は白紙ですね」
と、肩を竦めて言います。
初めて会った魔法使いが二ーヴァさんとは言わない方がいいかもしれない。
創成者の弟子ですって、聞きたかったんでしょうか。きっとそうですよね。価値が違いますもん。
生憎と錬金術師未満なので。
「いや、そんな訳ない!アイツほどの奴がわざわざ迎え入れたんだ、特別な何かしらがあるだろう!」
「ッ!」
ストラウトさんが詰め寄って怒鳴りました。
私はいきなりのことと、大きな声に委縮してしまいます。
「こらっ!いきなり怒鳴らない!いいわ、なら私の弟子という事でいいでしょ?」
二ーヴァさんが私を庇うように抱き抱え、ストラウトさんに杖を突きつけました。
「言い訳あるか!マジで!?なんもないの?うわー、誰にどう報告するんだよ」
ストラウトさんも混乱とかそういう感じで気持ちの整理がついてなかったのでしょう。
頭を抱えて、崩れ落ちました。
ああ、報告するのに創成者の弟子って楽なんでしょうね。
「……困りましたね」
「君のおかげでな」
「いえ、師匠のおかげですね」
私のせいにされたくありません。
「……はぁ、とりあえず今日は帰ってくれ。整理したい。明日午前中いつでもいいから来い。二ーヴァ、しばらくお前が面倒みろよ」
「はなからそのつもりよ。あわよくばアイツからぶんどってやる」
「私にそんな価値ないですけどね」
二ーヴァさんの過剰な期待値に対して私は私の感想を述べます。
無価値だと。
「お?変な事を言う。価値は付けるものだ。無いなら価値をつけろ。まったく、教育すらしてなかったのか」
ストラウトさんがスクッと立ち上がって少し怒ったようにそう言います。
「ふふ、いい事思いついちゃった」
「却下だ」
「私達の弟子と組ませましょうよ」
「だから、ダメだと……今なんて?」
「だから、弟子と組ませましょって。アンタんとこと私のとこの。どうせ待ってても帰ってこないわよ。なら、1人前にしておきましょうって事よ」
「なるほどな、ウチの奴の面倒を押し付けれるわけか。いいな、早速準備させよう!」
「……嫌ですけど」
「むりよ、貴女庇護下に置かれてるのよ?勝手は無理よ、諦めなさい。悪い様にはしないから」