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獅子奮迅  作者: げんぶ
78/85

73話


 「じぃさん、あんた美夜古を助けられるか?」


 美夜古の安否が気になる。深山錦は魔法使い、そうならば治療ができる可能性がる。

 老人は少し沈黙し、美夜古の方へ歩みだす。


 「お前の奮戦に期待する。

  あの小娘の方はまぁ、努力はしてやる。」


 ため息交じりに老人は靄の中へ消えていった。


 自身の体の状態を確認する。

 両目は完全に失明している。左半身の感覚が鈍い。

 現状のままあの老婆に一撃でも与えることは不可能だろう。

 だが、可能性は見た。

 深山錦が彼女ら二人の戦闘中に美夜古が薄墨渦の魂を喰らいに行くといった瞬間。

 そして薄墨渦が黒い魂を糧にして弦上の物体を体の一部として使用した瞬間。

 この二つが鍵であると分かった。


 「偶々魔法使いになった青二才が何を言う。

  そんななりでこの私を張り合おうなんざなぁ!?」


薄墨渦が靄の中から一瞬で距離を詰めてくる音がした。

頭を掴まれ地面に打ち付けられる。後頭部に激痛が走る。

彼女が接近してくるのは察知できた。


現状反撃は不可能だ。何故なら今のままでは魔法が使えない。

なら使えるようにするしかない。答えはこれまでの戦いで得ている。

自身の魂を感知する。

そして相手の魂を感知する。

感知できた魂は4つ。自身の魂、深山錦、美夜古、そして薄墨渦。


「感知、工程完了……!!!」


そして喰らう。魂を、自身の魂か相手の魂を喰らわなければならない。

感知できて分かった。自身の魂が3人に比べて一番小さく、弱弱しい。

薄墨渦の魂は一番大きく、赤く、燃え盛る業火のように揺らいでいた。

喰らう相手はこの薄墨渦しかいない。

だがどうやって喰らえばいい。決まっている。

口が、歯が、目が、耳が、舌が、俺という存在を形取り噛みつき、噛み、飲みこむ。

頭がいる。そう、頭がいる。

だがそれをどうやって作ればいいのか分からなかった。


自身の魂に何かが食らいついてくる。魂が軋み、魂を形作る血のような液体が流れだす。

それが形を持った魂と一緒に引き千切られ、飲まれ、食われ、失われていく。

いったい何に、どうされているのか。知らなければならない。

知らなければ失われる。負ける。殺される。

 何がだろうか。命、精神、心。

 それは魂だった。


 発想を想像する。

 喰われるのは魂。ならばそれを奪い取るのもまた魂であるはずだ。

 自身の魂を変化させるしかない。形を、新しい形を与える。

 魂を喰らう物。

記憶をたどる。衣笠大にとって魂、命を奪う地上に存在する最高位の王。

 形を与えた。だがまだ弱い。どうすればいい、足りない、足りない。

 魂が足りない。命が足りない。


 食べられているからだ。徐々に弱る。ならば抵抗しなければならない。

 抵抗しなければ、殺られる。


 襲い掛かる業火に対抗する。形に獣の姿を与える。獅子の姿を与える。

 喰らい付け。業火を食べつくし、飲み尽くせ。

 獅子には頭から下は必要なかった。要は食べて、自身の魂の糧とすればいいのだから。


 魂の中に魂が浸される。徐々に徐々に満たされていく。

 不思議な感覚が広がる。

 幸福感に似たなにか温かさをもったものが内側から広がっていく。

 大げさなことを言ってしまえば、今なら何でもできる気がした。

 

 「私の魂に気安く触れるんじゃない!!!」


 首を掴まれ投げ飛ばされる。

 水面へ接水するまでに体へ意識をやる余裕がなく、不格好な着水となった。

 水面は浅く、左腕がおかしな方向へと曲がっていた。

 

 ゆっくりと右腕を突いて起き上がる。やはり左半身の感覚がない。

 だが不思議と痛みは強くなかった。

 恐怖はなかった。持続する幸福感、これがなにを意味するのか。

 直観で右腕を薄墨渦の方へ向ける。

 右手を銃の形へ変える。

人差し指、中指を前へ。親指を上へ、薬指、小指を内側へ織り込む。


 ふと思った。

高木八重や美夜古と過去に関わっていた俺ではない衣笠大はどんな魔法を使ったのだろうか。


“再誕”というのだったか。

魔法となる為の昇華儀式。その過程で出会ったアルファという少女。

彼女はこんなことを言っていた。


「刻印はね楽譜なんだよ。音を出すのは君自身だ。

 なぞるには魂がいる。でもただなぞるだけじゃない、読んで意味を理解していくんだ。

 魔法が君にどう答えるのか楽しみだ。

 心に従って、思うがままにただひたすらに喰らい付いていけ。」


 頭に言葉が浮かぶ。意味は分からなかった。

 でもこの時必要だと思ったのはこれだと思った。

 意味も分からないのにどうしてそう思ったのか、不思議だ。


 「flying」


 刻印がなぞられた。魂がそれに答える。魔法が答える。

 衣笠大の魂に呼び起され、肉体に刻まれた刻印が衣笠大を承諾した。

 魂が薄墨渦のから得た魂と自身の魔力を混ぜ合わせ、現象を呼び起こす。


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