7話
3時間ほどの経過したところで斬院は大を叩き起こした。もっと言うと胸倉をつかまれてそばの本棚めがけて蹴り飛ばされた。本棚への衝突した衝撃と体に走った激痛が完全に俺を再起動させる。
「気分はどうですか?」
「最悪だ。斬新な目覚まし。くらくらする。」
「それはどうも」
「褒めてない」
ゆっくりと起き上がろうと一瞬上を見る。壊れた本棚の上半分が曲がっているのに気づいた。嫌な予感はしたが予想通り、雪崩のように数冊の本が崩れ落ちてくる。運よく落ちた本の角は当たらずほっとした。
「大切な本です。後で片づけて置いてくださいね」
斬院は穏やかな声で無理を言う。かすかな記憶に美夜古に一矢報いた跡、そして目覚めの蹴り。
一体何冊の本が床に散乱しているのだろうか。おそらく数は40はある。しかも一冊一冊が分厚く10センチはあるのではないか。
「よく見えないでしょうが我慢してください。あなたの目だけはどうしようもなかった。本来であれば私生活のサポートを彼女がやるのですがね。」
「喧嘩を売ってきたのはあいつだ。」
「今はその程度でいいんですがね、追々そうも言ってられなくなる。」
「じゃあどうなるんだよ」
「私はあなたの敵になる」
「何?」
「命の恩人が味方だなんて決まりがあるとでも?」
斬院は俺の足元にあった本を一冊拾って渡してきた。
「その本はね、君の言う手品師、魔法使いについて書かれているものです。
こんな話聞きたくないでしょう。
ですが、今後の世界を生きてもらう為です。聞いてもらいますよ?」
「・・・・・・勝手にしろ。」
俺は聞くしかなかった。
生き返って、もう二度と関わりたくないと思った現象、生き物。
だがずっと逃げられそうにないと感じてはいた。今はこの男の話を聞くしかない。
「まずはこの世界の現状です。厳密には魔法界と呼ばれる我々の世界についての話ですね。
2015年11月20日、現在世界にいる魔法使いは118人。見習いを含めると少し数が増えますがね。」
「案外少ないんだな」
「ええ、今も魔法使いは減っています。
減り始めたきっかけは数百年前に起きた魔法使いの一斉淘汰ですが、まぁその名残が現代に残ってしまっているんですよ。」
「なんでそんなのが起きる?」
「強すぎたんですよ。
強くて、魅力的で、自由な力。
そんなの人が持てばどうなるかわかるでしょう。」
そうだ。そんな力を持ってしまったから、俺は死んでしまったのだろうと思った。