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獅子奮迅  作者: げんぶ
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60話


 松前美夜古は藍央学園の校舎の屋上から町の風景をコンクリートの床に腰をつけて深山錦の家のある方向を静かに見つめていた。


 「みやさんどうした~?」


 美夜古の友人がドアを開けて彼女に話かけてきた。


 「弥生。なんでこんなところに?」


 前原弥生。美夜古の学校での数少ない友人だった。立ち入り禁止のテープをくぐってきたらしい。足に黄色いテープを付けたのに気づかないまま弥生は美夜古の隣に腰かけた。


 「聞いたよ。みやさんは向こう側だったんだね。」


 弥生は少し寂しそうに美夜古の見ている方向をじっと見る。


 「弥生はパーティーに参加するの?」

 「うん。そうすればお父さんとお母さんに会えるかも知れない。

  顔も名前も思い出せないけどね。」


 寂しそうに3カ月後のパーティーに参加する理由を弥生は美夜古に話す。美夜古は少し言葉に詰まった。美夜古達はお互いの事情を少しではあるが知っていた。ある時、気が付いたらこの町いて、この学校に通うことになって、そして魔法を学んでいた。時間が少し近づくにつれて大切なものをなくしていることに気づく。家族や友人、それらに関わる記憶がなくなっていることに。弥生は両親の記憶を奪われていた。それに気づき、弱っている彼女を偶然美夜古が救った。そんな経緯で2人は友人になった。


 だが2人はその友情もタイムリミットが迫っていることが分かっていた。3カ月後のパーティーで二人は敵同士、殺し合う。そんなことをなるべく2人は考えないようにしながら会話を続ける。


 「弥生ならできるよ。

  大切な人を取り戻せる力を弥生は持ってる。」


 自身の勝利を願ってくれているのか、自分の敗北の願っているのか。薄い感情が籠った小さな声でそう言ってくれた美夜古の気持ちを疑いたくても疑ってはいけない。そんな感情に弥生はもどかしさを覚えた。


 「みやさんはお姉さんに会う為に頑張ってるんだっけ。」


 以前美夜古から聞いた言葉を頼りに弥生は言葉を繋ぐ。少し長く友人でいたかったから。


 「うん。今は何処で何してるのか分からないけど。

  確かめたいことがあるから。」

 「衣笠大だっけ?お姉さんが最後に会ったかも知れない人。」

 「そう。当の本人は覚えがなさそうだけどね。

  話て分かった。大は姉貴の言ってた衣笠大じゃない。

  皮が同じだけの別物よ。」


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