6話
美夜古は床にゆっくりと座り込み。ぼうっとしていた。
「美夜古さん?」
斬院に名前を呼ばれ、彼女は我に返った。
「大君はしばらく目覚めないでしょう。やりすぎですよ?」
「すみま…せん。」
我に返っても彼女の頭の中は先ほどの自分に対する大の攻撃が繰り返し再生されていた。
普段、人間以外を相手にすることもある彼女は一般人が反応できないような反射能力を得ていた。
いついかなる時でも対応できるように経験も積みものにしていた。
なのに、反応できずに攻撃を許してしまった。
「こいつは本当に逃げたんですか?」
美夜古は力が入っていない自分の声に気づかず、何かに対して怯えるような声を漏らした。
「ええ、間違いなく。そして今は使い方を忘れ、新しい身体に振り回されている。」
「じゃあなんであんな正確に攻撃を」
「無意識にやったんでしょうねぇ。視えていないだろうによくやる。それにしても…。」
斬院は美夜古の様子まじまじと見て苦笑した。
「痛み分けになってしまいましたね。早く着替えてくるといい。」
美夜古は自身の腹の上から胸部にかけて刃物のようなもので服の上から皮膚に薄い切り傷を付けられ、内側に来ていた衣類に血が滲んでいることに気づいた。
彼女は焦って部屋を後にした。
「さて、話が全く進まなかった。ここからが本題だったというのに全く。」
斬院は机に置いていたマグカップに手を伸ばし、苦いコーヒーを口にいれた。