46話
静けさのある道をただ歩く。雨音が脳内に静寂をもたらし日はゆっくりと沈んでいく。中古の本を取り扱っている書店で雨宿りを行う。俺は店の前に座り込んでまた、空を見上げた。雲になりたいと思った。ただ何も考えずに浮かんでいるだけでいい。責任を与えられることなく、ただ自由にそこに在るだけの存在。気が付けば消えているし、現れている。
「お兄ちゃん迷子?」
一人の少女が店の中からやってきて話しかけてくる。
「ああ、迷子なんだ。少し雨宿りしていってもいいか?」
俺は俺の言葉を聞くと横にしゃがみ込んだ。少女はこちらをちらちらと視線を向けてくる。どうしたのかと聞くと少女は私と同じなのだとおかしなことを呟いた。
「千代?」
また店の中から人が出てきた。名前を呼ばれた少女は走って店の中へ駈け込んでいってしまった。入れ替わるように出てきたのは同い年くらいの少女だった。
「あなたは?」
尋ねられたので俺は迷子だと答えた。何処へ帰ればいのか分からなくなった、家へと帰る地図をなくした迷子なのだと。
「そんな馬鹿みたいなことを言ってると嫌われるよ?
名前は?」
雨音がノイズに変わった。我に返って普通な返しをする。
「衣笠大。本当は迷子じゃない。家でしてきたダセー奴だ。」
普通な返しにならなかった。きっと頭の中がぐちゃぐちゃなせいに違いないと思いたかった。
「衣笠ね。良かったらうちの中で温まっていく?」
「いいのか?何が起こっても知らないぞ。」
「大丈夫。私鍛えてるから。抜け殻みたいなやつには負けない。」
少女は自身に溢れた顔を見せると笑って店の中へ入っていった。俺はそんな少女の背中を追いかけた。店の奥まで入っていくと奥に2階へ通じる階段があった。そこを上り少し広い部屋の中へ案内される。隣の部屋では何やら騒がしい物音がしていて何人か人がいるのを匂わせていた。
「あ!言うの忘れてた!
私は会津茜。高校2年生なんだけど衣笠も高校生でしょ?」
会津茜は自己紹介を軽く済ませると俺の事を聞いてきた。肉体年齢では恐らく22歳くらいだがここは高校2年生ということにしておいた。
「騒がしいでしょ?うちには子どもが7人くらいいるからね!」
「子沢山だな。
関係ないけど来る最中に店の中で人を見なかったけど大丈夫なのか?」
「ああ、大丈夫。今日はそういう日なの」
そういう日ではない、引っ掛かる言葉だったが深く詮索する必要はないと感じその会話はその場で流れた。




