44話
上空にある巨大な眼球。見下ろした先にあるのはこの町とそこに住む一般人。そして正体不明の魂。深山錦が言っていた町の問題を解決しろというのはこれの事なのだろうか。
「俺は上と下にある2つを処理すればいいのか?」
「いずれそうなる。でも今は例の、藍央学園の問題を片づけてほしい。」
「俺はあの学園にいって何をすればいいのかまだよくわかってない。
教えてくれどうすればいいんだ。」
「あなたはパーティーが開かれる夜。あの学園にいる人を一人残らず殺すの。」
気分が悪くなった。鎌足霞と対峙したあの夜の事を思い出す。交わる金属音、崩れる人工物。その中で肉を割いて、血を流し、相手を倒すことだけに固執した人の意思。二度と体験したいとは思えないし、また誰かも分からない相手を傷つけることはしたくない。そう、思った。
「やりたくない?でもやるしかないんだよ。
もう待つ時間なんか無いの。」
「どうして…なんだよ」
「あの学園はあの空にある目と魂を少しだけど操れるの。
魔法使いは魂を喰っていかないと生きていけない。だから多くの魂を求めるの。」
「だからあの目と黒い魂を使って町の人を殺すっていうのか!?
本当なのかよ!?」
「学園にいる情報屋から得た情報だから間違いない。
パーティーの夜、目は黒い魂に形を与え地上に溢れる魂を狩る。」
「信用できるのか!?」
「あなたが目を覚ます前に100人以上が死因不明で処理されてる。
深山錦が調査に出た結果、事件発生前後に黒い魂が辺り一帯に集まっていた。
なんなら後で資料を渡してもいい。」
「そんな…。」
生きる為に生きている命を犠牲にして繁栄を繰り返すのは食物連鎖の理として間違ってはいないと思っていた。だが同種の、人の命を奪って俺の手に残るのは一体何なのか。何も考えずにまたあの学園に足を踏み入れる覚悟が今の俺にはできなかった。




