39話
影は部屋に入ってきた突風と共にその場から颯爽と姿を消し去った。
舞台の壇上に残された少女は月光に照らされた講堂の惨状を見る。残ったのは瓦礫の下敷きとなったかつての友人、そしてその隅には朱色に染まった穴に浸かった死にかけの男。
「あと何回、繰り返されるんだろう…。」
美夜古の中に残ったのは後悔と積み重なる失敗の上に手に入れた勝利とは呼べるようなものではない何かだった。
ぎぃっと異音が講堂に響き渡る。見知った影が戦場の跡地に侵入してくる。ブーツの足音がゆっくりと近づいてくる。そして、目の前でその影は真顔のまま私を見据えてきた。
「美夜古、よくやった。」
「師匠。」
美夜古の目の前に現れた影の正体は彼女の現在の師である松前斬院だった。
「何が良かったんですか。」
美夜古は思った事をそのまま口にした。こんな結果を見るためにここへ来るつもりはなかった彼女の中に怒りがあったのは明白だった。
「アタッシュケースは手に入り、衣笠大君は見事に覚醒を遂げたようだ。
私の見立てでは足から刃を生やすのが限界だと思っていましたからね。
上出来ですよ。」
「それは私も予想外でした。
少なくとも霞を倒せるほど彼の能力は戻っていないと思ってた。」
「だが彼は彼女を相打ちに近い形で撃退した。
最後に君が手を出さなければもっと面白いところまで見れた気はしますがね。」
「気に入りませんでしたか?」
「いいえ?君と鎌足霞の関係は知っていました。
本当に残念ですよ。」
美夜古は松前斬院の喉元に銃口を突き付けた。
「本当は知っていたんじゃないんですか?こうなるって。」
「何故?」
「彼が目を覚ましてからあの老人への接触。
その後、あなたは私に衣笠大を学園に連れて行くように指示していた。
その結果がこれです。あなたが思い描いていた理想図に当てはまる要素が多すぎる。」
「急がないと衣笠大は死にます。この話はまた今度にしましょう。」
松前斬院は彼女の前を素通りして、衣笠大の方へ真っすぐ歩いて行った。彼の秘密主義な部分に美夜古は苛立ちを募らせる一方だった。




