33話
松前美夜古は言葉を続けた。
「今、あなたにとって障害となっているのは何ですか?」
「クソ弱ぇ魔法使い。」
「あなたは?」
「クソ強ぇ一般人。」
「何が必要ですか?」
「魂がいる。」
「もう一度だけ聞きます。助けは?」
「必要ない」
「じゃあ勝ってください。」
「もちろん」
衣笠大の周辺で青白い爆炎が上がる。鎌足霞は驚き、講堂の中央にある円形の舞台へ下がる。彼女にとって得体の知れない”蒼炎”という魔法は唯一の脅威だった。その性質を見極めるまでは牽制で衣笠大の行動を様子見するしかなかった。
衣笠大は自身の魂の場所を高木八重の残したものから目覚めた後からここまでの道中、探し続けていた。何処を探しても感じ取れない自身の魂。相手の魂を視れるようになってから確かに感じ取れるようになった魂という概念。しかし何処にもない自分の魂。だからこそ気づいた。一度は成功した神秘の行使、成功した際の感覚は今でも体に残っている。その軌跡から直感で、衣笠大は自身の肉体を自分自身に喰わせた。
「もって3分も…ないな」
松前美夜古は衣笠大の行動を見て、彼の限界時間を悟った。彼はその理由も意味を知らず、限界時間まで活動を続けるだろう。彼が行使する神秘の理屈と意味を知っているのは松前美夜古と二人だけ。
身体の至る所に巻かれた包帯の傷が滲む感覚があった。口内から鉄の味が滲む。流血が始まったのは衣笠大が攻撃を開始したのとほぼ同時だった。美夜古は全身に走る痛みに耐え、じっと両者の戦闘を見守る。
衣笠大は蒼白に染まった瞳で鎌足霞の魂以外の視覚情報を遮断し、一切の障害物を切断、破壊し獣のごとく獲物への距離を詰める。右足の先から伸ばした扇状の刃のみが彼に許された攻撃手段だった。全身を巧みに操作し、許された獲物を振るった。
「派手なだけの三流芸当で調子に乗るな!」
鎌足霞は握っていた拳銃を床に投げ捨てた。口笛を鳴らす。数十羽の黒蝶が集まるような光景が衣笠大の視界に広がった。集合した黒蝶が特殊な鱗粉をまき散らしながら彼女の両手に収まっていった。黒蝶は二丁の長身の銃へと姿を変え、砲身は衣笠大を捉える。
「”Larva-discharge !”」




