30話
衣笠大と鎌足霞は第一魔法資料保管室について早々に部屋の中の探索を始めた。鎌足霞が安全であることを告げ、衣笠大はそれを深く考えずに信用したからだ。
「ここにはどういう物が残ってるんだ?
見たところ過去の在学生の残したファイルだとか、魔法に関する研究論文みたいなのしかないぞ。」
部屋に並んでいたいくつかの本棚に並べられていた書物を適当に選び手に取り開く。明かりをつけるのはさすがにまずいらしく、鎌足霞は赤い炎の塊を生成して俺の傍を浮遊するようにしてくれた。ところどころ見えにくい部分はあったがどうやらここは本当にただの資料保管室らしい。
「確かにこの部屋はただの資料保管室だよ。
でもここには魔法に関係する面白い文献もあるよ。
例えばこれなんかね。」
鎌足霞は一冊の本を渡してきた。本のタイトルは第88期卒業生だった。
「こいつに何が載ってる?」
「78ページを開いてみて。」
78ページは酷く傷んでいて、とても記載されている内容が読める状態とは言えなかった。
だが数か所だけ読める部分もあった。そこには気になる内容が記されていた。
「高木八重、師である●●を殺害容疑で拘束、後に逃亡。同学年の責任者である松前●●、追跡捜査中に瀕死の重症を負う。”セブンスロスト”との関連性有。…なんだよこれ。」
「それは現在逃亡中、または行方不明となっている魔法使い、見習いのリストです。
美夜古は当時、高木八重の事をよく調べてたよ。」
「じゃあこの文章に出てくる松前っていうのは!?」
「あなたは美夜古の事をもっと良く知った方が良い。
さぁ、次に行きましょうか。」
鎌足霞は元魔法研究第9特異科研究室へ向かって行き、俺は後に続いた。元魔法研究第9特異科研究室の部屋の前に着く。ドアの外側から感じ取れる謎の異質さを俺の肌は感じ取っていた。鎌足霞はゆっくりとドアを開け、こっちへ来いというように火の玉で俺を誘導する。
「元魔法研究第9特異科研究室って、ここには何があるんだよ。」
「ここには元魔法研究第9特異科研究室が研究していた実験器具や資料が一部のこされているの。解散させられちゃって近いうちにこの部屋は無くなるんだけどね。」
「何を研究してたんだ?」
「私も詳しくないけど、噂だとある資産家からの依頼で誰でも魔法使いになれる方法を研究していたらしいよ。」
「誰でも魔法使いに、…か」
だが深山錦から聞いた話と繋がる気がした。先天的な感覚を得ていない限り、原則として魔法使いになることは不可能。何か引っ掛かるような話だ。
部屋を歩きながら見回ると、古びた机の上にアタッシュケースが置かれているのに気が付いた。
「なぁ、このアタッシュケースはなんだ?
見た感じだと他の物より新しく見える。」
「君にはそれが見えているの?」




