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獅子奮迅  作者: げんぶ
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24話 帰還


 深山は装束を着なおし、机に並んでいた本を一冊手に取り美夜古に投げ渡した。美夜古は咄嗟のことだったが慌てず本を両手でキャッチした。


 「確かに、あなたに傷を与える者が現れてもいるようです。

  ですが、それでも現状打破は!」


 その時だった。

 ガタガタ、ガタガタガタガタっと地鳴りのような物が二人の足元から襲ってくる。

 両者の判断は冷静だった。

 まず始めに彼らが行ったのは目の前にいる人間が行ったのではないかという確認だった。

 そして、互いの仕草からそれはないことはすぐにわかる。


 ならば次にとる行動は単純明快だ。

 自己防衛魔法の発動だった。

 契約を交わした神秘との契約から預かった魔法を呼び起こす。


 部屋を照らしていた明かりが一瞬にして消滅する。

 同時に自己防衛魔法を両者は作動させる。

 深山は自身を中心とした周囲30cmを円形に囲い自分に向かってくる物理的な攻撃を無効にする魔法を。

 美夜古は身体能力向上の魔法を問題なく作動させた。


 ドクン、ドクンっと心音のようなものが部屋に響き渡る。


 「深山様、この心音は……?」

 「さて、な。私のものでは、ない、が……?」


 う”あ”ぁ”っ……。

 奇妙な産声が聞こえてくる。

 余りにも不気味で、部屋の空気は異界そのものだった。

 二人の緊張感は最大まで高められる。

 いつ、何が襲ってきても自身の身だけは守れるようになっていた。


 突如として深山と美夜古の間に黒い球体が現れる。

 二人はすぐに臨戦態勢に入った。


 「なるほど、な。

  美夜古よ、手を出すな?」


 深山の言葉に反応するように、球体の中心から縦に青白い炎が広がっていく。

 黒い球体は産声を上げる。


 「あ“あ”あ“ぁぁぁ”っ!!!」


 現世に青白い炎を右腕に灯した青年は帰還した。彼が右腕に握っていた刃は深山の心臓を狙う。深山はその一撃を防ごうと左手を広げ、真っすぐ青年に向けて腕を伸ばす。


 「block!」


 深山の左腕は切り裂かれ、地面に落ちる。

 深山は膝を地面に突き、青年は部屋の壁へそのまま転がってしまい意識を失った。


 「本当に、厄介な力だ……。

  美夜古、彼は力を示した。

  ガーディアンの責務、見直すように言っておく。

  すぐとは言わんが多少は変わるだろう。

  しばらく休め。この老体、しばらくは動けなんだ。」


 深山はそう言って瓦礫の山の中に埋もれて眠りについた。

 美夜古は彼の心音を確認したがしっかりと動いていて安堵した。


 彼女はそのまま深山の横に倒れていた衣笠大を担いで家への帰路へついた。

 拠点がある北区のはずれの方へあと少しでつくところまで来たところだった。

 足を止めて、後ろを振り返るとそこには一人の男が立っていた。


 「深山様に、会ってきました。

  あの人は私達ガーディアンの待遇を変えると言ってくれた。

  衣笠大というのはそこまでの魔法使いなのですか、師匠。」


 夕陽にあてられ、美夜古の前に立つ松前斬院という彼女の魔法の師はそこにたっていた。

 

 「美夜古、次の指令です。

  この北区雨情に藍央学園からAランクの魔法使いが2名放たれました。

  早急にこれを始末して下さい。」


 松前斬院は美夜古の問いには全く答える気がなかった。


 この状況で衣笠大は使い物にならない。それなのに師は続けざまに指令を送ってくる。

 そんな彼らを私は許せなかった。


  「師匠、その任を任されるのは私以外には?」


 「そこにいる衣笠大。

  そして、他の”衣笠大”、ガーディアンが1名ずつ任にあてる予定です。」


 「彼らとの合流は?」


 「ありません。あなたたちは接触しても互いの正体を知らずに終わるでしょう。

  あなたたちの拠点を移します。

  明日、現地協力者の元へ行きそこを拠点として下さい。

  それまでに”忘れ物”も取りに行くといい。

  もう、時間はありませんよ?」


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