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獅子奮迅  作者: げんぶ
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18話 狼煙は上がる

 彼女が倒れる直前に俺は全神経を逆撫でされるような感覚に襲われた。

 その瞬間に彼女は身を挺して光の閃光を受け止めた。この世界の認識を改める。

 自身のすべてが善であり、目の前に立つ男のすべては悪である。

 では自身の善とは何か、男の悪とは何か。善とは、自身が定めることのすべて。

 悪とは目の前の障害すべて。


「別れは済ませてこい。」


 男の言葉には高木八重への敬意があるように感じられた。

 そして、この空間がそう長くはもたないということも告げられた。


 八重を傍に生えていた一本の木の根元まで運び、仰向けで寝かせた。

 男はじっとこちらを見てはいたが邪魔をする素振りは見せようとしなかった。


 「ありがとう。あなたは優しいんだね。」


 高木八重の声は薄く弱弱しくなっていった。


 「あなたはこれから”あの子”に会う。

  その為には魔法を使い、あの子と張り合わなければならない。

  あなたとあの子が良い関係になることを願っています。」


 「俺は何処かであんたに合ってるのか?」


 「一度だけ、ね。

  私と大、そしてあなた。立場は違ったけど楽しかった。」


 「そうか」


 「あの子は、大が契約していた子の意思を継いでいる。

  とても繊細で傷つきやすいけど、とても人間が好きで優しい子。」


 衣笠大が契約していた子というのは恐らく、神秘を宿した生命のこと。

 それに該当する俺が知っている獣はあの黒い獅子しかいない。


 「分かった。大切にする。」


 「ありがとう。」


 そう言って彼女は深い眠りに落ちていった。もう二度とこの世界に戻ってこない彼女の魂。

 本心から拾い上げたかった。救いたかった。


 彼女は最後に俺の手を握ってくれた。

 脳裏に彼女の言葉がよぎる。


“今ある命と向き合え、現実から零れ落ちた魂は向き合わなくていい。”


 俺は彼女の言葉に従うことを決めた。それが今は正しいと思ったから。

 戦場へ、歩いて向かう。戦場には少し暖かで、穏やかな風がなびいている。

 男は大きく平らな石に腰を下ろし、目の前に広がる湖を静かに眺めていた。

 その姿からは、これから命を削り合う相手とは思えない温かみを感じさせる。


 俺はそんな男の背後に立つ。男は立ち上がり地面に置いていた刀をとる。

 男との距離は約20メートル。


「別れはすんだようだな。

 心地よい殺意だ。人間の意思というのは厄介だな。

 強く、芯のある意思には他者に影響を与え、大きく人としての成長を促す。」


 刀を抜き、刃を男は俺に向けてきた。


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