14話 西区へ
朝を迎えた。雑木林の中を太陽の光が割って入る。地に着いた明かりはまだら模様を描く。風に揺られて雑木林がなびく。小鳥の鳴き声がどこからともなくやってきては消えるの繰り返し。こんな気分にさせてくれる環境は身体と精神に安らぎを与えてくれる。そんなことを思いながら俺は玄関に出て、美夜古を待っていた。
数分後に美夜古が玄関にやってきて、何やら意味ありげな長身のものを布に巻いたものを方に掛け、靴を履く。
「なんだそれ」
「追々わかります。」
彼女が先を歩き、俺は後を追う。何処へ行くにしても俺は後ろだった。知っている町を歩くだけのはずなのに、知らない場所へ案内される。目的地である西区は行った数こそ少ないが全く知らない場所ではなかった。
歩いて2時間ほどたった。目的地だった西区の一軒家、というよりかは屋敷へ到着した。縦には大きくなかったが横に広く、この辺の民家に比べれば十分の広さを誇っていると思った。
美夜古はチャイムを鳴らさずにドアを開け、屋敷の中へ入っていき慌ててその後を追いかける。中には観賞用だろうか植物が多く、植物園に入った気分にさせられるほどあちらこちらに植物が置かれていた。
玄関には一人の老人が立っており、こちらをにらむように佇んでいた。
「斬院の弟子と、お前が”衣笠大”...か。斬院の魔法も大したものだ。」
「今日は時間を作って頂きありがとうございます。
こちらは当主からです。」
美夜古は方に背負っていた長身の物を老人に渡した。
「5年か...。錆ついとらんだろうな?」
「当主の魔法に疑念が?」
「いいや。信頼はしていないが信用はしている。
中に入って居間で話すとしよう。」
老人は一人家の奥へ奥へと進んでいき、俺たちは速足で彼を追いかけた。