放課後の一幕
できる限りのんびり楽しく書いていきます。
一話一話は短いですが、そのぶん読みやすいと思います。
――放課後、それは学校における一日の授業や学校活動がすべて終わった後の時間だ。
大半は授業が終わると同時に教室を飛び出し、クラブ活動や部活などでたまりにたまった不満や鬱憤をはらす。
中には教室で今日の授業の復習や明日の予習、仲のいい友達と何の目的もなくしゃべっていたりと皆が思い思いに自由な時間を過ごす。
俺も本来はその一部となるはずだった。いや、そうなりたかった。
それなのに――
「あれ? 桃野先輩どうしたんですか? いつにもまして目に精力がないですよ。一回ここから飛び降りてみたらどうですか。きっと目が覚めますよ」
「それ、目が覚めるというより俺死んでるよね……目がぱっちりどころか永遠に開けることすらできなくなるから……」
「そんなことくらい知っていますよ。だからオブラートに包んで死ねって言っているんじゃないですか。あまり乙女に全部言わせないでください。察して死ぬのが男です!」
「……ごめん、それなら男やめるわ。さすがにまだ死にたくないし」
「こんなにかわいい後輩の頼みなのに……。仕方がないので今日はもういいです。た明日お願いしますね」
「……いや、明日も死なないからね」
校舎の3階にある空き教室で、俺に遠回しな死の宣告を言い放ってきた彼女――咲花可憐はにっこりとほほ笑んだ。
こいつはことあるごとに俺にちょっかいをかけてくる。名前は『可憐』なのに性格は粗暴で完全に名前負けしている。
確かに、パッと見た感じはかわいい。顔立ちはすべてのパーツが整ってはいるが15歳と考えると少し幼くも見える。それでも黒く長い髪や適度な肉付きの体、透き通るような白い肌には何とも言えないエロさがある。
もう少しおしとやかになれば完璧な大和なでしこといえるだろう。
「はあ、おしいな。最初見たときは美少女だったのに……」
出会った当初を思い出して涙ぐむ俺に対して、困惑したような表情で咲花が言った。
「ちょっとどういうことですか! 私は今でも十分すぎるくらい美少女ですよ!」
「いや、今は残念系美少女を通り越してただの残念な人だから。もう遅いから……。大体美少女とはもちろん顔の良し悪しもあるが、一番の判断基準はやっぱり性格だと俺は思う。がさつで粗暴なのは一発アウト。では、優しければいいのかと言われたらそれも違う。大切なのはバランスだ。常に優しいのはいいかもしれないが、それが何年も続くと相手に気を使わせているんじゃないかとなりこちらが委縮する。やはり普段は多少わがままになっていても大事な場面場面で、相手にふとした優しさを見せることができる女子こそ俺は至高だと思っている。」
俺は声高らかに自分の理想の女性像を語る。
「つまり、大雑把で粗暴でがさつで横柄な性格のお前は――」
俺は席を立ち、咲花との距離を詰める。突然の出来事に咲花は困惑し、少し子をこわばらせている。
「美少女どころか、予選敗退しているただの残念系ロリだ!」
「…………………………」
突然の宣言に咲花はポカンと立ち尽くしていた。
「あ、言いすぎちゃった……?」
――そして数秒後、意識を取り戻した咲花はすぐ目の前にいる俺の胸ぐらをつかみ甘い猫なで声で、
「桃野先輩。桃野先輩の今の発言訂正して下さい。じゃないと…………殺しますよ♡」
と耳元で囁いた。
「ご、ごめんなさい……」
「世の中、謝罪だけではどうにもならないんですよ。それで、死に方は飛び降りにしますか、絞殺にしますか、それとも……シ、サ、ッ?」
「そんな新婚夫婦みたいなノリで言われても……。さっきは言いすぎました……」
俺は許してもらおうと必死に謝罪する。というよりも咲花の力が思っていた数倍強い。女子なのになぜか勝てない。もはや俺が貧弱すぎるのかとも思えてくる。
「わかりました……」
ようやく咲花に気持ちが通じたのか俺をつかむ力が少し弱まる。俺はほっと息を吐く。
――そして再び力が強まった。
「では、絞殺で」
……あ、どうやら僕はここで死ぬようです。