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第31話 スターシャイン ー①ー

 あたし達は新進気鋭のパーティ、綺羅星スターシャイン

 血気盛んだけど、俊英との呼び声高き灰狼族の槍士そうしヴァレット。

 勇壮なるドワーフの戦士ギム。

 攻撃魔法も回復魔法もなんでもできる万能の賢者レイル。

 そして、あたし。パーティリーダーであり、ゼーニック流の第2道場でも天才や才子等々、すでに多くの称賛を得ている将来有望な剣士。


 その4名で構成されたあたし達のパーティは破竹の勢いで神至の塔を攻略し、近年での最速攻略者タイトルホルダーとまで言われてたの。


 称賛や羨望を当たり前の様に受け、あたし達は日々充実した日を送っていた。

 日々目に見えて成長し、平凡な冒険者からしたら進化とさえ呼べる様な急成長を繰り返していったの。


 それが当然だった。

 あたし達は誰も彼も追い越して、快挙を繰り返していった。

 あたし達より成長が早い者なんていないし、どんなに優秀だと言われた者達でも、苦戦することはあったけど、結局はあたし達の方が上だとわからせてやったんだ。


 そう、あたし達に勝てる奴なんていない!

 あたし達こそが、新たな歴史を作り、伝説に名を遺すパーティになるんだ!!

 そう信じて疑わなかった……。





 ここからは俺が変わろう。

 そんな俺達に、けちが付き始めやがったんだ。

 実は、本来綺羅星スターシャインは、元々は4人パーティじゃなかった。

 ドーガっていう柚熊族、俺と同じ獣人の大男で、パーティの防御を一手に引き受けていた奴がいたんだ。


 だが、そいつが死んだ。

 もちろんダンジョンでの戦いなんかじゃない。

 俺達は強いし、きちんと情報も仕入れていたからな。

 負ける可能性なんて、これっぽっちもありゃしなかったんだ。


 じゃあ、なんで死んだのかって?

 正直言いたくねえ。

 たくっ、あの阿保が!

 死んでまで俺達に迷惑を掛けやがる。

 まあ、あれだ、痴情のもつれってやつだ。

 あの阿保は冒険者としては優秀ではあったんだが、私生活はろくでなしだった。

 そういうことだ……。


 兎に角、あの馬鹿野郎のせいで俺達は4人になっちまったのさ。

 苦肉の策として、本来なら遊撃しつつ指揮する立場のジニーが前衛での壁役をこなす事になったんだが、やっぱり無理が出ちまった。


 そうじゃのう、いくらジニーとはいえ最前線での壁役に加え、指揮と場合によっては回復までこなすのは、やはり無理があったわぃ。

 

 そうね、ドーガの抜けた穴はやっぱり大きかったってことね。

 だからすぐに補充要員を探したわ。

 

 もちろん、俺達と肩を並べられるだけの実力者を探した。

 だが、上手くいかなかった。

 そこそこ名の知れた奴を入れて試してみても、如実に実力差が出ちまうせいでな。


 わし等は全員とびきり優秀じゃからのぅ。

 ただ優れている程度では、足元にも及ばんわぃ……。


 まあそこで、ある程度の妥協止む無しって話になったのよね。

 

 今のままじゃ先に進めねえからな。

 やりたくねえが、いねえもんは仕方ねえ。

 俺達は止まるわけにはいかねえんだ!

 

 ……そうして、何人か入れ替えては試しつつダンジョンの攻略を再開したその時、あたし達は出会ってしまった。

 ちょうど新しい加入希望者がいなくて、しょうがなくあたし達4人で攻略していた時にね。

 

 60階層で魔物も群れを相手にしていたが、そいつ等は堂々と姿を現すとどっかり座り込み、ふてぶてしい態度で俺達の戦いを見学し始めやがったんだ!


 実に奇妙な取り合わせの2人じゃった。

 太った中年の男に、若く美しい娘。

 一見すると商人とその娘、あるいは妾や奴隷とも想像できる組み合わせじゃった。


 実際話してみたけど、出会った当初ケイは嫌に遜った話し方をしてきたわ。

 だから商人や貴族の関係者に思えてならなかったの。


 けっ、あんなの見せ掛けだけだろうが!

 口調だけは礼儀正しかったが、眼はいやに冷え切っていた。

 俺達を値踏みしてやがったんだ!


 後から考えてみれば、ヴァレットの言う通りね。

 でもあの時はわからなかった。

 口ではあたし達の実力が知りたいなんて言ってたけど、てっきり強引なパーティ加入希望者だとしか思えなかったわ。


 ……それは彼女が上手かったんだ。

 わざと強気な態度を示し、しかも僕達が必死に探している役割をこなせる人材だと公言してみせんだ。

 加入希望ではないとも発言してたけど、あれはわざとこちらが誤解する様に言ったのさ。


 レイル、あなたの言うとおりよ。

 彼女、ううん、リオナは狙ってあたし達に誤解させたの。

 今思えば彼女の方が一枚も二枚も上だったわね。


 上手く乗せられた俺達は、実力を見るために仮のパーティを組み、魔物との戦闘を行ったわけだ。

 正直に言うぜ。

 俺は端っから、あいつ等を見下してたんだ。

 どうせこいつ等は、他の有象無象と一緒の口先だけの雑魚だってな!

 だけど、そうじゃなかった。


 うむ、ドーガの抜けた穴を補って余りある程じゃった。

 むしろ2人が入ったおかげで、これこそがわし等の目指すべき道じゃとさえ思ったくらいじゃわい。


 ギムもそう思ったんだ。

 私も最初はヴァレットと同じで、お手並み拝見ぐらいにしか思っていなかったんだけど、すぐに考えを改めさせられたわ!

 だってそれほど、彼等は理想的だったんだもの!


 あのおっさんは、俺達と魔物との戦力差を正確に見極めてた。

 例えば多数の群れ相手の時は、余裕をもって倒せる人数だけを俺達に向かわせ撃破させた。

 逆に強敵相手の時は、絶妙なタイミングできつい攻撃が自分に向くように仕向けていた。

 戦い易す過ぎて、これに慣れたら戻れないんじゃないかって思っちまったぐらいだぜ。

 この俺がだぜ!?

 けっ、その時点でおっさんの掌の上だったわけだ。


 ……ケイだけじゃない。

 リオナもすごかった。

 彼女は魔力弾という初歩的な魔法でしか攻撃しなったけど、相手を的確に崩して反撃への好機を演出するのに長けていたんだ。

 本当に目から鱗だったよ。

 それに、回復魔法。

 どんなに離れていても、瞬時に回復できる高位の術を無詠唱で、しかも魔法名さえも省略し、視線さえ向けずにみんなを癒していたんだ。

 あれほどの使い手は見たこともないよ……。

 僕も天才だと自負してたつもりだけど、戦う以前にあの光景を目の当たりにした時から、心を折られてたんだろうね……。


 それからあんまりにもあっさりいくもんだから、ボス戦に挑戦したのよね!

 

 あいつ等、特にケイも自信満々だったし、俺達も何度も戦って勝ってるしな。

 奴等の本当の実力を知るためにも、ボスに挑んだわけだ。

 そしたら、出てきたのは火吐竜ブレイズドレイク

 最悪なことに、60階層の最強のボスが出てきちまったんだ!!


 ドーガがいた時でさえ苦戦したのよね~。

 ほんとっ、あの時は死ぬかと思ったわ。


 そうじゃのぅ、あの時は儂も含め半数が重傷を負ったしのぅ……。


 けっ、出現率なんぞ1割もねえくせに、こんな時に出てくんなよ、っ話だ。

 まあとにかく、敵が敵なんで俺達も苦戦を覚悟したわけだ。

 だが、結果は俺達の完勝だった……。


 一応、初めの方は苦戦したのよ!

 まっ、それもケイが火吐竜ブレイズドレイクの動きを覚えるまでの短い間だったけどね。


 うむ、最初こそ対処を間違えれば致命傷を負いかねない場面もあったのぅ。

 わしもケイに助けられなければ、死んでいた可能性すらあったわぃ。


 ケイ、あの野郎はしばらくすると本気を、いや本性を露にしやがったんだ。

 あの顔。

 まるで牙をむき出しにした野獣そのもの!

 獣人族の俺よりも、はるかに獣らしい恐ろしい姿だったぜ!


 鬼が嗤った顔とは、ああいうのを言うのじゃろうな……。

 そうなった、あの御仁は恐ろしいくらいに強かったわぃ。

 わし等の誰よりもな!

 

 そうね、最後にはケイ一人で火吐竜ブレイズドレイクの攻撃全てを対処してみせたくらいだものね。

 1つ1つ竜の攻撃を潰していき、更には適格にダメージを与え自分に注意を引き付けた!

 あんなに楽に倒せるなんて思ってもみなかったわ。


 途中から回復もいらないくらいだったからね。

 リオナなんて、ほぼ攻撃を止めてケイをうっとり眺めていたくらいさ。

 それほど信頼していた、というか、ケイの楽しみを奪わないために何もしなかったんだろうけどね。


 まったく、ふざけた奴等だぜっ!

 っといっても、攻撃こそしたものの、そのチャンスさえおっさんにお膳立てされたもんだからな。

 俺達が文句を言える立場じゃねえ。

 それに最後なんて、ほんと理解不能だったぜ!

 あのおっさん、竜を投げ飛ばしたんだぜ!?


 ……人の何十倍もの体躯と重さを誇る竜じゃ。

 あんな光景、わしも見たのは初めてじゃったわい。


 私もよ。

 でもケイのおかげで、弱点の柔らかい腹部を一斉攻撃できたの。

 あんなに簡単に決着がつくなんて思ってもみなかった。


 まあな。

 今思えば、あいつ等のおかげで危なげなく快勝できたんだ。

 だが、あの時はそこまでわからなかった。

 あいつ等の働きそのものは認めつつも、パーティへの加入を認めてもいいぐらいにしか思っていなかったんだ。


 とんだ思い上がりよね。

 彼等にもあたし達の驕りを見透かされた。

 だからボス戦後にパーティへ勧誘したけど、何の逡巡もなく断られたんだわ。

 一方、断られたあたしの方は青天の霹靂。

 じゃあなんで共闘したのよ、って話じゃない!?

 

 まさか建前だとしか思ってみなかった俺達の実力が知りたい、ってのが本音だったとはな……。

 しかも雑魚戦やボス戦から出した評価が、凡人と同じだからな。

 怒りで真っ赤になっちまったぜ。


 そりゃあ誹謗や中傷を受けた事なんて枚挙に暇がないけど、でもやっかみなんてものは有名人なら大なり小なり受けるものだわ。

 むしろ勲章だと思って、受け入れるべきなのよ!


 じゃが、彼奴等の評価はそうではなかった。

 彼等自身と比較して下した正当な評価じゃった。

 優秀だと言われ慣れ、また自分自身もそうであると信じて疑わなかったわし達には、到底受け入れられるものではなかったがのぅ……。


 当然、俺は怒り狂ったぜ。

 ぽっと出の新人が舐めた口を利くんじゃねえ、っとさえ思ったぜ!

 だから思い知らせてやる意味で、不意打ちしてやったのよ。

 それも俺の中で最速の一撃。

 火吐竜ブレイズドレイクの鱗でさえ貫く、俺の自慢の技をな。


 もっとも、全く通用したなかったようじゃがな。


 うるせぇ!

 茶々入れんなっ!!

 あー、避けきれず顔面にもらったように見えたんで、生意気なおっさんの顔がズタボロにしてやったと内心ほくそ笑んでたんだ。

 そしたらどうだ!?

 俺の全力の一撃を真面に受けたはずなのに、爆風が晴れた後に現れたのは無傷のおっさんだったんだ!!

 信じられるか?

 一切防御の姿勢も取らなかったんだぜ!?

 それなのに怪我どころか、傷一つありゃしねぇんだ。

 こんなこと、圧倒的な実力差がなきゃできはしねえ。

 その後は俺の欠点を挙げながら近付いたおっさんに、苦し紛れの突きを放ったんだが、一瞬の内に後ろに回られ頭を地面に叩き付けられたわ。

 まっ、肥大したプライドのせいで、俺の眼が曇ってたんだ。

 そうでなきゃ、あんな化物に真っ向から挑むなんて馬鹿、やらかさなかったのによ!


 次はわしか。

 あっさりヴァレットを下したのを見て、あの御仁は儂らより上だとは理解できた。

 理解できたが、あの御仁による儂の欠点の指摘に納得できるかは別問題じゃ!

 彼奴は、わしの自慢のこの力でさえ不足と言い切りよったんじゃ。

 しかも儂よりLVが下で、種族的な違いで人族よりも遥かに力のあるドワーフである、この儂に向かって、自分の方が上だとの声高らかに謳いよった!

 儂は我慢ならなかった。

 彼奴の増上慢を正さねばならんと、怒りに燃えた!

 だから、奴から差し出された手を粉微塵にしてやると、全力で握り締めたのじゃ。

 もっとも、骨まで砕かれたのは儂の方じゃたがな。

 それも、一瞬たりとも拮抗できんかった。

 疑いようのないほど、儂の完敗よ。

 そして儂自身の矜持でさえも、時として目を曇らせる要因になる事を教えてくれたのじゃ。


 次は僕かな。

 僕の相手はケイじゃなく、リオナだったけどね。

 もっとも、ケイだったとしても結果は変わらなかったろうけどね……。

 リオナも僕の欠点を指摘し、今後の改善策を教授してくれたけど、それは僕の限界を、賢者としての僕を否定するものだったんだ。

 だから反発した。

 そしたら僕にわからせるために力比べしようって話になった。

 回復魔法が到底敵わないことは理解できてたけど、攻撃魔法でなら負けるにしても、少しでも追い縋れるじゃないか、って考えたんだ。

 だけど、それも僕に都合の良い希望的観測に過ぎなかった。

 勝負は刹那の内についた。

 僕が魔法を発現しようとした瞬間、突如地面から生えた無数の黒い錐に縫い留められてしまったんだ。

 多分、彼女は物凄く手加減してくれたんだろうね。

 発現した錐一本でさえ、僕を殺すのには十分だったんだから。

 そう、彼女もまたケイと同じく、僕らでは比較するのも烏滸がましい程の格上の実力者だったんだ……。


 最後はあたしね。

 あたしの番になる頃には、みんなが一撃で倒されていったから、もう十分に強さの違いを理解させられてたわ。

 それでも、わかっていてもなお反抗したの!

 何故かって?

 ケイの言った一言が、どうしても認められなかったからよ。

 彼にしてみれば、あたし達は凡人と同じだって言葉がね。

 確かにケイほどの強者なら、あたし達なんてそこ等にいる冒険者達と変わらないでしょう。

 だけど、だけど、あたし達にも自負があるのよ!

 これまで多くの戦いを勝ち抜き、優秀だと、最速攻略者タイトルホルダーだと言われ続けてきたプライドがね!

 例えケイだろうと否定させない!

 この誇りを否定されたら、あたしじゃなくなる!!

 その思いで必死に立ち向かったわ。

 だけど、その結果は散々なものだった。

 私の全力の一撃は、ため息交じりの片手技に負けたのよ。

 それもゼーニック流の同じ剣技でね!!

 ほんと、ケイったら厭味ったらしいんだから。

 でもそのおかげでっていったらあれだけど、力付くで現実を直視させられたわ。

 あたし達もまだまだだって。

 上には上がいるんだよ、ってね!


 そんで、あの野郎は俺達を瞬殺できるのに、わざわざ全員回復させやがった。

 その上で、リベンジはいつでも受け付けるってよ!

 けっ、豪気なこって!


 まっ、本来の予定通り、踏み台として叩き潰されるよりはよかったんじゃない?


 その代わり、ひどく苦い敗北を味わう事になったがのぅ。


 ……その味が味わえるのも、僕達が生きているからこそじゃないかな?


 こんなもん、誰も欲しくねえんだよ!

 ちきしょう、今は勝てねえのは骨身に染みたが、悔しくて仕方ねえぜ!!


 ケイも言ってたじゃない。

 苦い苦い敗北の味を噛み締めて、反撃の刃を研ぎ続けた者だけがリベンジできるんだって!

 全員五体満足だし、改善点を教えてもらった上で、あたし達の愚かさや傲慢さを気付かせてくれたと思いなさいよ!

 これを教訓に、あたし達はもっと上に駆け上がるのよ!!

 

 けっ、あのおっさんは俺達の先生かよ!

 まっ、でも、敗北の味はまず過ぎるが、不思議と負けたこと自体は納得できるんだよな。

 俺達もまだまだだったってことか。

 ちきしょう!

 必ず成長しておっさんを見返してやるからな!!


 そうじゃのぅ、今は受け入れるしかないのぅ。

 じゃが、後で必ずリベンジしてくれるわ!

 そして、思い知らせてくれる!

 非力と断じた、この儂の力をのっ!!


 ……うん、僕も頑張るよ。

 今は彼女が指摘した通りにしないといけない。

 でも今だけさ!

 必ず改善して、再び賢者としての僕を、僕の誇りを取り戻すんだ!


 うんうん、みんなその意気よ!

 あたし達も褒められ過ぎて天狗になってたようだし、今回のことを教訓にもっと修行に励むわ!

 そして、絶対リベンジするわ!

 今度は、あなたが味わうことになるのよ。

 この苦い敗北の味をね!

 首を洗って待ってなさいよ!


 ケイッ!!






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