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第21話 発奮

 朝はベッドでまったりしていたが、買い物と早めの昼食を済ませると今日も又迷宮探索に向かった。

 買い物と言ったが、手に入れた物の売却や壊れた装備の下取り、そして新たな装備や回復薬等の消耗品の購入だ。

 装備については、どうせさっさと上に登ってすぐ新らしくするので、現在買えるもので最高の物、40階層で手に入る装備を購入した。

 これですっからかん。

 急いで稼がなければならない。

 それと、さっさとレベルを上げる必要がでてきた。

 俺の嫁というか、恋人のリオナのおかげでだ。


 なんと、彼女のLVは68もあったのだ。

 それも歴代最高傑作、さとりの一族の姫巫女など、ステータスやレベルアップ補正に関与する強力な称号を保持しているというおまけ付き!

 そして肝心のステータスに関してだが、後衛の魔法使いといった風で、魔力や精神力等に関する項目はLV100の冒険者以上だったのだ!

 まあ逆に体力や力などは半分のLVの前衛程度なのだが、それにしても突出した能力をもっているのは間違いない……。


 結局何が言いたいかというと、一緒にパーティを組んでいるが、俺の方がお荷物になっているのだ。

 彼女は”旦那様ならこの程度ならすぐに上がるので、気にする程もありません……”、なんて言ってくれるけれど、それでもちっぽけなプライド的に我慢できないのだ。

 それにリオナに頼れる所をみせたい、という単純な欲もある。

 一刻も早く現状を改善する必要があった。

 だからちょっと無茶をすることをした。


 







 所は神至の塔の30階。

 階層ボスではなく、人気の少ない迷宮のはずれ、何もない行き止まりの大部屋に来ていた。

 赤土の土壁、その壁には適度な光量を放つ小さな魔鉱石、ティルライトが無数に散らばっていて、迷宮内での明るさが確保できている。

 たまに宝箱が出現するらしいが今はないし、そんなものに用はない。

 用があるのはトラップ、それも50階層以下ではここだけにしかない最悪の罠、召喚陣だ。

 

 名前から予想できると思うが、誤って魔法陣を作動させてしまうと一定時間魔物を召喚し続けるという凶悪なものだ。

 しかも出現するのはこの階層の魔物だけじゃない。

 20~40階層の魔物がランダムで現れるという、実にはた迷惑な仕様だ。

 ギルドで販売している地図には罠の場所がきちんと記載されているし、この階層に初めて挑む冒険者には必ず職員が注意を喚起している。

 しているのだが、偶に出現する宝箱の中身がおいしいらしく、ここを定期的に巡回する冒険者もいるそうだ。

 ただ意地が悪い事に、このトラップは魔物が踏んでも作動するそうで、残念ながら被害は後を絶たないのだとか……。


 

 まあでも、こいつは俺の役には立ってくれそうだ。

 俺の短時間でのLVアップの役にな。


「リオナ。それじゃあ、すまないが予定通りに……」

「はい! 私は端で壁役を顕現させ、自分の修行をしながら見守っていますね! それと、緊急時の回復はお任せください」


 俺の役に立てるのがうれしいのかに見ほれる様な笑顔で頷くと、大部屋の隅に行き壁役の魔物らしきものを具現化し出した。


「ディース! オルガン! ザロック!」


 何もない空間から巨大な影が3つ、人頭蛇身の女悪魔?、凍れる鬣を持つ巨狼、そして鋼の肉体を誇るゴーレムが彼女を守護するように回りを取り囲んだ。

 彼女と一緒に戦った方が対処もし易いし楽なのだが、それだとLVの方が先行しスキルの上がりが悪くなってしまう。

 スキルを上げるのはあくまで熟練度、つまり対照となる技を使い続ける必要があるのだ。

 現状は見てわかる通り、彼女の方が俺より遥かに強い。

 殲滅速度も比ではないに違いない。

 つまり、彼女が魔物を倒すはしから勝手にLVが上がってしまうのだ。

 それでは仲間に護られながらLVを上げてもらう、()()冒険者と同じになってしまう。

 スキルが低くLVだけが高い、アンバランスで弱い冒険者に。

 それだけは避けなればならない。

 そういうわけで短期間でLVとスキル、双方を効率良く上げるために、リオナには申し訳ないが一人で戦わせてもらう事になったというわけだ。

 

「それじゃあ、はじめるぞ!」

「はい! 旦那様、ご武運を!」

「ああ、任せておけ!」


 大部屋のど真ん中まで行くと、隠された魔法陣が忽然と現れ発光し出した! 

 最初に敵はおなじみの大鬼オーガだ。

 動き出す前にオーラで強化した長剣で首をたたっ斬る。

 続いて小鬼騎士ゴブリンナイト小鬼弓士ゴブリンアーチャー小鬼魔法士ゴブリンメイジとどんどん召喚されてくるが、現れる端から斬り捨てる。

 

 おっ、やっと歯応えのあつやつが出て来たな。

 巨獣ギュスターヴ、5mを越える巨体を誇る化物だ。

 まだ行っていない35階層に出てくる魔物で、動きはのろまだけどとにかくタフで頑丈だ。

 巨体からののしかかりや踏み付けなんかは強力らしいが、動きが遅いので回避しやすい。

 弱点は、首だったか。

 俺は素早く背中に飛ぶ乗ると、


「破斬!!」


 金色の気を全力で纏わせた刃で敵を、たたき斬れないっ!? 

 巨獣の分厚い首の半ばで止まってしまった。

 驚いている間にギュスターヴは暴れる暴れる。

 後ろ足で立ち上がると、悲痛な声を上げながら俺を振り落とそうと激しく抵抗した。


「このっ! さっさとくたばれ!!」

 

 ここで落ちるわけにはいかない。

 長い体毛が命取りだ。

 縄替わりにして首元までなんとか登ると、今度こそ首を斬り落としてやった。

 ただ時間がかかり過ぎてしまった。

 間誤付いている間に何体もの凶悪な魔物が召喚されたようで、不意を打たれた。


「おわっ!? ああああああっ!」


 巨蛇の毒液が、炎の魔法が、疾風の刃が、怪魔の巨腕が、一度崩れたら連続で受けてしまった。


「旦那様!? 逆行再生リ・ジェネレーション!!」

「っ、すまない!」


 強烈な痛みが一瞬で引いていく。

 運が悪い事に30階以降のモンスターばかりが召喚されてしまったようだ。

 しかも40階層の難敵、大魔猿ザラガルまでいやがる。


 どうやら早々に窮地に立たされたようだ。

 しかも、手を拱いている内に召喚され続け、悪化の一途を辿るという悪辣さでだ。

 

 ……捨て身でいくしかないか 

 幸いなことに敵の弱点は網羅している。

 そして最大の幸運は彼女、リオナがいることだ。

 彼女がいれば重傷だろうと瞬時に癒してくれる。

 それに、彼女が、愛しい少女が見ているんだ!

 ここで情けない姿なんか見せるわけにはいかないんだよ!


「リオナ! すまない、回復を頼む!」

「お任せください! 決して旦那様を死なせはしません!!」

「ああ頼んだ!」


 良い女だ。

 それも、俺にはもったいないくらいの。

 ならやるしかない。

 やるしかないんだ!

 覚悟を決めしばし瞑目すると、かっと見開き嗤った。

 嗤いながら突っ込んだ!


「おおおおおおおおおっ!!」


 あらん限りに叫び、そこら中無差別に魔力弾マジックバレットやら魔飛剣フライングソードやらをばら撒きつ、一番弱そうな奴目掛けて飛び込んだ!

 そして刺し貫く。

 怪我は気にしない。

 魔物達の多彩な遠距離攻撃で傷付いても無視する。

 弱い順に懐に飛び込んで殺していく。

 魔物が巨体なら敵の身体が少しは防いでくれる。


 こいつは頭!

 こいつは首!

 こいつはわき腹から心臓を!

 

 気で強化し、魔力を放出して牽制し、目につく敵を片っ端から弱点を斬りつける。


 ある時は回り込み、またある時は敵の身体を盾に突進し、被害に最小限に抑え立ち回った。  


 だけどやっぱり数の差ってのは偉大だ。

 1対1なら大魔猿相手でもここまでやられないのに、物量のせいで刻一刻と傷が増えていった。

 時には肉を裂かれ、骨も折られたりもした。

 でもその度に、これ以上に無い完璧なタイミングでリオナが助けてくれる。

 

 更に素晴らしい事に彼女の魔法は再生というより、喪ったものが元に戻るようで、流血し肉を千切られても、回復後は疲れはあるもののそのまま戦えた。

 

 本当に彼女には感謝の念しかない。

 彼女なしにはこんな無茶はできなかっただろう。

 一刻も早く彼女に報いたい!

 俺が彼女に相応しいと存在なのだと証明したい!


 初めて抱いた欲と生来の負けず嫌い、そして戦場の熱気に押され、いつしか俺は戦いに没頭していった。

  

 戦って、戦って、戦い抜いた……。


 

 気付けば俺の前に最後の敵、大魔猿ザラガルが倒れ伏していた……。

 感慨はない。

 召喚された中では最強の敵だったが、大量の敵を倒し続けLVアップした後では、注意は要るが無難に倒せる敵に成り下がっていたからだ。

 大きく息を吐き身体を解す俺に対し、温かな癒しの魔法が降り注いだ。

 顕現させた魔物達に敵のドロップを集めさせつつ、回復魔法を掛けてくれたようだ。


「ありがとう、リオナ。君がいなければ、乗り越えられなかったよ」

「そんな、私の助けなど些末なことでしかありません。旦那様の勇猛さと類まれなる実力があったからこそです」

「でも君の回復がなければ、死んでいた場面もあったと思うけど……」

「いいえ。それは旦那様が私の回復を前提に動かれたからです。支援が無ければ無いなりに対処され、最後には必ず旦那様が勝利を手にするはずです」

「う~ん、そうかな?」

「旦那様なら絶対です! 必ずそうなります!」

「はははっ、ありがとう」

 

 力説してくれるリオナに感謝しつつ頭を撫でた。

 まあ確かに独りの場合なら、別の方法を取っただろう。

 だけど、そうなれば今以上に時間が掛っただろうし、疲労や消耗も恐ろしいことになっただろう。

 少し休めばまた戦える今とは比べ物にならない。

 やはりリオナのおかげだ。

 彼女がいるから、また何度でも戦えるのだ。

 気持ち良さそうに目を細め撫でられていた彼女はこてんと首を傾げ、俺に問うた。


「……休憩したら、まら戦われるのですか?」

「ああ、そのつもりだけど、何か問題はあるかい?」

「どうかご自愛ください。回復できるといっても、受ける痛みは本物なのです。心も疲弊し弱るのです。知らず知らずの内におじけ、体が鈍っていきます。そうなれば万に一つの失敗が起きてしまいます」

「心配してくれてありがとう」


 予想以上に傷付き、無茶をした俺を心配してくれたのだろう。

 不安げな彼女を誰も見てないのをいいことに引き寄せると、そっと胸に抱いた。

 恥ずかしいには恥ずかしいが、それ以上の事をしたのだからと開き直る。

 今は俺の弱さより、彼女の思いを優先させる時なんだ。


「リオナがいるからこそ、こんな無茶ができるんだ。それに君なら俺の心の変化もわかるだろう。無理だと思ったら止めてくれて構わない。君の判断に従うさ」

「よろしいのですか?」

「もちろんさ! それに、俺の学習能力や対処能力を見せる良い機会だ。俺の力を、君の目で確かめてくれないか?」

「……旦那様を信じます。どうか無理をしないでくださいね」

「ありがとう。でも、君の心配をすぐに払拭して見せるさ!」


 一度こつんと俺の胸に頭をぶつけると、俺の思いを汲み見惚れる様な笑顔を見せてくれた。

 ああ本当に、俺にはもったいないくらいの良い子だ。

 其れに応えなくちゃな!


 発奮し意気軒昂な俺は、その日、何度も何度も召喚陣を起動させた。

 もちろん、リオナの心配な気持ちを拭い去る事も忘れない。

 敵の動きを実際に見た俺なら簡単な事だ。


 2戦目、何度か負傷しリオナに回復魔法を掛けてもらった。

 3戦目、わずかに傷付くものの彼女の補助は必要なくなった。

 4戦目、敵はただの俺の獲物に成り下がった。

  

 そして幾度も幾度も起動し直し、金も経験値もスキルの習熟も思う存分、気のすむまでやりまくった。

 そうして体感時間で大凡夜、腹が空くまで戦うと、笑顔の彼女を伴いダンジョンを後にした……。




NEW!!

 LVUP!! SKILL UP !!


     御村慶一   

LV   23 → 47      

生命力 1480 → 3250     

魔法力  370 → 1190      

気力   423 → 1540      


力    215 → 603     

器用度  257 → 727      

体力   198 → 589      

敏捷性  177 → 556     

魔力   201 → 634     

運    192 → 601     


スキル

 ゼーニック流剣術 LV 9 → 20

  人の型  LV  9 → 18

  地の型  LV  8 → 17

 

 アレクセイ流詠唱魔法術  LV 8 → 18  

  簡易詠唱魔法 LV 7 → 15 

 無詠唱魔法  LV 7 → 16  





 リオナ・ウィル・エミット

LV   68 → 71      

生命力 2811 → 3070     

魔法力 3180 → 3488      

気力  1079 → 1374      


力    323 → 356     

器用度  708 → 754      

体力   483 → 507      

敏捷性  678 → 693     

魔力  1201 → 1318     

運    703 → 747     


スキル

 心象具現化リアルアバター LV 34 → 35

 

 エミット流魔法術  LV 30 → 32





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