第19話 死闘の後は?
「……君は?」
いきなり現れた少女は本当に奇麗だった。
まだ幼さが残るが実に均整のとれた美しい顔……。
一見すれば彫像の様な人工物めいた冷たい印象を思い浮かべるかもしれないが、そうじゃない。
彼女の薄く浮かべる柔らかい微笑みは人間味に溢れ、人を惹きつけて止まない。
そして、どこかオリエンタルな情緒を想わせる短めの民族衣装からこぼれ出た、長く白い手足。
襲われたせいなのか破けた胸元からのぞかせるやや大きめながら形の良い胸。
太ももや腰回りの芸術品さながらだが、それでいて肉感的で正直情欲を覚える。
いかん、いかん。
戦場にいながら、何失礼な事考えてるんだ。
見たこともない美少女を前にして、柄にもなく緊張と興奮をしているようだ。
それに戦いの勝利への高揚感、それと長年の苦しみからの解放で変なテンションになっているな……。
話しがずれた。
兎に角目の前の少女はただ美しいだけでなく、生まれてこの方彼女なしの俺でさえ、ついそういう目で見てしまうぐらい色気があるんだ。
特に黒曜石の様な美しい髪と目。
あの宝石の様な瞳を見ていると、つい引き込まれそうになってしまう。
ただ、やっぱり彼女が此処にいるのは不自然極まりない。
服の不自然な破れからあいつ等に襲われたのだろうが、獄鬼や赤毛との戦いの時は、一体どこにいたんだ?
今は霧が晴れているが、先程まではかなりの濃さだったんだ。
少女が現れた前後で、いきなり消失したというのも作為めいたように感じる。
彼女が作り出したとみる方が自然だろう。
そして消えた強敵達……。
消滅する際に気や魔力が一切流れてこないという、通常ではありえない現象。
まさかとは思いたいが、彼女が元凶という可能性も捨てきれない。
ん? なんだ?
彼女は一瞬嬉しそうに微笑んだと思ったら、真剣な表情になると突絶地面に手をつき、深々と頭を下げだしたじゃないか!
「ちょっ、ちょっと! いきなりどうしたんですか! やめてください!」
「旦那様、申し訳ありません。必要な事とはいえ、旦那様には大変な苦痛を味合わせてしまいました」
「!? じゃあ、やっぱり君が! でもどうして!? ……必要なこと?」
「そうです。獄鬼については不幸なできごととしかいいようがありませんが、赤毛については私にとっても旦那様にとっても必要なことだったのです。そうではありませんか?」
「っ!?」
必要? 俺に? あの赤毛との戦いが?
……確かに必要だ。
左肩を噛み千切られ、右手にいたっては手を喪失までしたが、張本人の彼女のおかげで今は完璧に元に戻っている。
それに何より、長年のこの鬱屈した思い、トラウマだった死の象徴を自分の手で倒せたのは、はっきりいって最高だ。
実に晴れ晴れした気持ちで、正直あの頃の何でもできる無敵の自分に戻ったかのようだ。
彼女はどうゆう意図でそんな事をしたのかはまだ見当もつかないが、俺にとって必要だったってことは否定できない。
どうやったかは想像もできないが、赤毛と再び引き合わせてくれた事については感謝したい。
「……あの戦いは私にとって必要なことでした。そこは、あなたに感謝しなければなりませんね」
「いいえ、いいえ! 旦那様に感謝していただくわけにはまいりません。たしかに旦那様にとっても必要なことでしたが、私の勝手な都合を押し付けた結果、偶々そうなっただけなのです!」
「貴方の思惑はどうあれ、私が助かったのは事実です。ですから、この感謝の気持ちはどうか受け取ってください。それに、いつまでもそうされていると、私の方が心苦しいです。どうか立ってください」
「旦那様のお優しい心は大変うれしいのですが、それでも身勝手な思いから恥ずべき行為をしたのです! この程度で許されていいわけがありません!」
「いいえ、あなたの誠意は十分に伝わりました。ですから、どうか私の意を汲むと思って、立ってください」
「あっ……」
このままでは埒が明かないので優しく言い聞かせ、彼女の手を取りゆっくり立ち上がらせた。
至近距離で見ると、本当に美人だ。
やや彫りが深く彫像の様に整っていて、それでいて人を惹きつけて止まない愛嬌がある。
うん、美人だな……。
そんな事を想っていると、彼女の瞳が潤み顔に朱がさした。
やばい、ついまじまじと観察してしまった!
それに手を握ったまんまだった。
慌てて手を離すと、彼女は顔を赤らめながら初々しそうに小さな声で囁いた。
「旦那様は、私の事を美人だと思ってくださるのですね。うれしいです」
「!?」
「私の胸に太もも、そしてお尻にも興奮してくださるのですね。これからの夫婦生活が上手くいきそうです!」
「ええっ!? ちょっ、ちょっと、待って!!」
気付かれていた!?
一体いつから?
性的な目で見たのは紛れもない事実だが、そんなのわずかな時間だけだぞ!
それに夫婦って……。
急展開過ぎてわけがわからない!
あまりな話に、俺の対外用の仮面なんか一瞬で剥ぎ取られていた。
「夫婦って? そっ、それに、興奮したなっ、なんて、君の見当違いじゃないかな?」
「そんな! 破れた胸元から見える胸の形が良いと、太腿やお尻が奇麗なだけじゃなく、肉感的で興奮すると思って頂けたではないですか!!」
「!? どうしてその事を! ……!? もしかして!」
「私はリオナ。リオナ・ウィル・エミット。人の内奥を暴き心象を具現化する一族、忌み嫌われたエミット一族の長の長姉にして、旦那様と同じ漂流人です。あっ、でも、これからは御村リオナになるのでしょうか? それともリオナ御村? あるいはリオナ・エミット・御村でしょうか」
「……」
突っ込み所が多過ぎる!
……まず彼女、リオナが俺と同じ漂流人なのはいいだろう。
彼女が特殊な一族の出で、他人の心が読め、更には心の中で思い描いたもの、心象を具現化できるなんて稀有な力をもっているのも、この世界では俺しか知らないはずの赤毛を顕現させたのだから、まず本当なのだろう。
だけど今重要なのは、何故か彼女の中では俺の嫁になる事が確定していることだ!
何で俺と結婚することになってるんだ!?
それに、よくよく考えれば彼女のテンションもおかしくないか。
何か妙にウキウキして、喜んでいるようだが……。
「慶一様、それは当然のことです。好いた殿方に嫁ぐのは女の喜びであり、私では叶う事はないと諦めていた奇跡だからです。お恥ずかしい限りですが、ついはしゃいでしまいました」
「俺の事が好き? それにあきらめていた?」
「私は一族の中でも、それこそ歴代の中でもとても強い力を持っていて、心を読むだけでなく、人の記憶も、それこそ本人が忘れた過去さえ読み取れるのです。私達はこの力ゆえ嫌われるので、外界との接触を絶って静かに暮らしていたのですが、大国に目をつけられ攻め落とされたのです。実はこの世界に来たのは第3皇子?、とかいう方の所に嫁がせるために押送されている最中だったのです」
「ええっ!?」
「本当に幸運でした! 誰が好き好んで自分の里を襲った、憎き相手の所に嫁ぎたいというのですか!!」
俺以上に波瀾万丈で、なんて過酷な人生なんだ。
それに彼女のことを思うと、安易に掛ける言葉も思い付かない。
住み慣れた場所を、家族や仲間達を大国の一方的な思惑によって失い、今真に憎き大国に無理やり嫁がせられる所だったのだ。
彼女の怒りは! 憎しみは! そして悲しみはどれほど深いだろうか……。
平和な暮らしをしてきた俺ではとても想像もできない。
下手な同情や慰めの言葉なんて、むしろ言うべきではない。
初見では落ち着いた雰囲気の少女だと思っていたが、これほど感情を顕わにするのも理由があったんだ。
だけど、そこから何で俺に嫁ぐ話になる。
むしろ今は結婚なんて話も聞きたくないのが普通なんじゃないか?
俺の心を自然と呼んだのか、彼女は艶然と微笑んだ。
「この世界に来て最も幸運だったのは、慶一様、あなた様に出会えたことです。私自身初恋ですが、本当にあなたに恋して良かったです。恋とはここまで心が浮き立ち、全てが輝いて見えるのですね!」
「いやいや! 君が俺にっ!? ありえないだろ! こんなデブなおっさんのどこに惚れる所があるんだ。むしろ嫌われる要素しかなだろ!」
「そうでしょうか? 容姿はムギーみたいで可愛らしいですし、お顔も素晴らしいと思います。特に強敵に立ち向かう時の御顔! まさに雄々しく戦う漢の顔でした!」
「あっ、ありがとう。そんなこと言われたのは初めてだよ。そっ、それと、ㇺっ、ムギー?」
「あっ、すいません。旦那様の世界ですと、茶色いパンダを想像してもらえれば近いと思います。普段はのんびり過ごしているのですが、仲間を守る時はとても勇敢に戦う動物です。普段は可愛らしいのですが、戦う時は本当に素敵なんです!」
「へっ、へえ~、そうなんだ」
「はい! とっても格好良いので、旦那様にお見せできないのが残念です」
「はっ、ははははっ」
……彼女はちょっと趣味が特殊なんじゃないかな。
ぐーたらパンダが戦う所はかっこいいか?
うーん、俺にはその感覚はわからんな。
あっ、なんかむっとしてる。
おそらくは、今の一瞬で俺の心を読んだのだろう。
彼女にとって心を読むのは、俺が息するのと同じようなものなのか。
「旦那様! 私があなた様を好いたのは、何も容姿のせいではありません! たしかに可愛らしくも、時には雄々しい姿は好ましく思いますが……」
「というと?」
「先程お話した通り、私は心が読めるだけでなく記憶も読めるのです。それこそ旦那様が生まれた時から今までのほぼ全てを見通すことができるのです」
「!? そこまでできるんだ」
「はい、そうなのです! 若い時のやんちゃな旦那様も素敵ですが、私は今の旦那様が特に好きです!」
「……こんな俺が? 俺は大嫌いだけどな。今の俺なんて、怠惰で堕落し切った豚そのものじゃないか」
「でも、そこから変わろうとしていますよね?」
「!?」
「旦那様が社会に出てからの期間、妥協と諦念の10年間があるからこそ、今の旦那様は輝いているのです! 自分自身の愚かさに対する強烈な後悔と反省の気持ち! 誰にも依らず自分の意思と力によって未来を切り開こうとする固い決意! そのどれもが素敵で好ましいです!」
「別に褒められたもんじゃないさ。今までの自分があんまりにも情けないからやり直そうとした、ってだけさ。それに、はじめたばっかりだしね」
「そうでしょうか? 旦那様の失敗はその境遇ゆえではないですか。出る杭は打たれ、年功序列による愚にも付かない決定を押し付けられる風土。そして社会。誰でもできる仕事を強制し、ただの歯車である事を強いる……。旦那様でなくとも、人を腐らせるには十分な環境です」
「……それでもだ。流されたのも、凡庸で退屈な生活を受け入れてしまったのも、他の誰でもない、この俺自身だ。俺が阿保だったことに間違いはないんだ」
「いくらでも自分以外に責を求めることができるのにそうしない。理由はどうあれ選択し受け入れたのは自分だからと、己にのみ、ただ己の弱さと愚かさを戒める。私はそんなあなた様を、愛しいと思ってしまったのです」
「っ!?」
彼女の笑顔が、その言葉が眩し過ぎて、顔を手で押さえ全力で横を向いてしまった。
これは恥ずかしい。
自分の内面を全て読み取かれるというのは、想像以上に恥ずかしいな。
それも全て解った上で褒められるというのは……。
顔が火照って仕方ない。
普通ならお世辞を真に受けるなという場面だが、彼女の言に嘘を感じない。
俺しか知らない事実、そして俺の内情を指摘した上で褒めているんだから。
これが嘘なら彼女は稀代の詐欺師になれるにもなれるに違いない。
まっ、その確率は低いだろう。
彼女が俺に取り入る理由が無い。
漂流人なのだから、ギルドから手厚い援助が受けられるのは、俺の記憶を読み取った彼女なら当然理解しているはずだからだ。
そっ、そうなると、本当に俺のことを好いてくれている事になるのだが……。
嬉しそうな笑顔の彼女は俺の推測を肯定する様に頷いてみせる。
まじか~。
「この世界に来てからの旦那様は、本当に素敵です。ひた向きに研鑽を続け、自分の力で生きるために、他人に未来を左右させないために、必死に努力していらっしゃいます。そして獄鬼との戦いで、御自分を高めるために強敵を欲しているのを知りました。私はその時にはもう慶一様の心と記憶を読み取っており、もう恋している状態でした。そして、浅ましくも私のためにも赤毛と戦ってもらおうと思ってしまったのです」
「そういえば、俺が赤毛と戦うのが君にとっても必要なことだって言ってたよね?」
「はい、私の一族の中で願いの儀と呼ばれる儀式です。赤毛との戦い、つまり、己の最も恐れるものと戦い、それに打ち克つ試練です。願いの儀は最も困難な儀式であり、乗り越えた者には望みを願う事が許されるのです」
「……なるほど、みえてきたよ」
「はい、旦那様の想像の通り、この試練を見事乗り越えた者ならば、例え長の娘との婚姻でも許されるのです」
「やっぱりか。つまり君は俺と結婚したいから、赤毛と戦わせたわけだ」
「そうです。しかもこの世界で咎める者もおらず、本来ならする必要も無い試練にも関わらずです。ただ二度と会えない家族に胸を張りたいがため、私の旦那様はこれほど素晴らしいのだと言いたいがために行ったのです。旦那様からしたら、甚だ身勝手理由で突然命を賭した死闘をさせられたのです。誠に、誠に申し訳ありませんでした」
「!? いい、いいって! これ以上、土下座しないでくれ!」
また地面に座り込む彼女を慌てて引き起こした。
しかし、これで漸く話が分かった。
つまり、彼女はこの世界では必要ないにもかかわらず、正当な手順を踏んで俺と結婚したいがために願いの儀を行った、というわけだ。
まあ、それも納得できないわけではない。
彼女にしたら俺がこうして乗り越えた事で、心に陰を作らず何に恥じる事無く婚姻を申し込めるのだから。
ただ、それにしても強引すぎたわけだが……。
それに疑問も残る。
「己が失敗して死ぬと思わなかったの?」
「いいえ、慶一様なら必ず乗り越えられると確信しておりました。それに、もし旦那様が武運拙く身罷れたならば、私も後を追う覚悟はできておりました」
「……本気で?」
「もちろんです! 私の勝手な都合を押し付けたのだから、当然のことではないですか。もしそうなったのなら、冥府にて旦那様の無窮を慰める所存でした!」
おおぅ、覚悟が極まってらっしゃる……。
情が深いというか、愛が特大級だな。
しかし、こんなおっさんがそんなにいいか?
初対面なのに、自分の半分くらいの年の少女を性的な目で見る変態だぞ。
そんな俺の思考を素早く読み取ると、彼女は即座に反論に転じた。
「たしかに嫌いな方にそんな目で見られたら、嫌悪感が先に立ちます。ですが、好いた方からなら別です。慶一様が私をちゃんとそういう対象として見て頂けるのはうれしいです」
「いっ、いや、君みたいな美少女を見ると、つい悲しい男の性でね」
「そうだとしても、無関心や悪感情を抱かれるより遥かにましです。私はいつでも身も心も捧げる準備はできています」
「いっ、いや、大変うれしいんだけど、こう言っては申し訳ないんだけど、正直戸惑いの方が大きいんだ。いきなり君を結婚相手にはみれないよ」
へたれというならへたれと呼べ!
こちとら30過ぎても童貞の、それも女性への免疫ゼロの称号魔法使い(笑)だぞ。
事務的な事以外ほとんど女性と話した事ないのに、いきなり結婚なんてできるわけがないだろうが。
そんな俺の言葉に対して、彼女は悲観的になっていない。
この展開も推測していたということか。
まあ、そうだよな。
記憶から俺がどういう人間で、どう歩んできたか知ってるんだから。
当然こういう解答になることも織り込み済みだったのだろう。
「旦那様は真面目で誠実な方ですから、こうなる事は予想できていました。それでも私の思いがどれほどなのか、まず知って頂こうと思いまして……」
「それでか。でも、俺の心って汚くない? 君をエッチな目で見るだけじゃなく、色んな黒い感情が渦巻いてただろ?」
「誰しも負の感情をもつのです。むしろ逆に全くない人は、何処か壊れているか人ではありません。それに旦那様の心は正直ですごく真っ直ぐです。人間味溢れる心は、見ていて楽しいです」
「そっ、そうかい? それにしても、俺は自分のことを結構腹黒だと思ってたけど、まだましなの?」
「……人間とは本当に愚劣で、どこまでも無慈悲になれるものなのです。正直、醜い心は身飽きました。それに、私の方が気持ち悪く思いませんか? こんな他人の心が見える化物なんて」
「うーん、正直最初の頃は恥ずかしかったけど、全部ばれてるならいいかって、開き直ったよ。君が俺の汚い部分を見ても平気なら、まあ、いいんじゃない?」
「ふふふっ、やっぱり旦那様は素敵です。心の底から私達を忌避しない人間なんて、本当に稀なんですよ!」
まあ俺の場合は出会いそのものが特殊だったしな……。
それにもう何もかも知られているわけだから、今更という気もする。
彼女がこんな俺の心を見ても平気なら……、まあいいんじゃないかな。
そんな俺を見て、彼女は益々嬉しそうに微笑んだ。
「ああ、早く旦那様に嫁ぎたいです! それと、私はお買い得ですよ! あなた様の敵を見分ける事ができますし、裏切ることのない真の友となり得る仲間を見つけることもできます!」
「君の能力なら簡単だろうね」
「あっ、それに正室の座は譲りませんが、管理できる範囲なら側室を増やしていただいても構いません! 強い男に女が集うのは当然のことですし、私も長の娘です。妻の序列や奥の安定についても、きちんと学んできております!」
拳を握り可愛らしく力説してくれているが、住んでいた世界が違うせいか、なんか見当違いのアピールをされている気分だ。
俺がハーレムを作る?
ろくに女性と話した事の無い俺が?
いやいや、無理だろ。
「とりあえず、いつまでもここにいてもしょうがないですし、今日はお疲れでしょう。軽くギルドに報告して宿に戻りませんか?」
「そうだな。今日はなんだか酒が飲みたい気分だよ。あっ、それと、こいつらどうしようかな」
「死体は放置すれば、魔物か迷宮に食われますので、放置でもよろしいのではないでしょうか。この者達の持ち物についてですが、慰謝料代わりに頂いておきましょう」
あっ、そういう所はしっかりしているんだ。
まあ、俺達の命や装備を狙ったんだから、やり返されたとしても文句を言えないよな。
それに、放置しても結局は発見した誰かのものになるだけだ。
それなら俺達が貰ってしまっても問題ないだろう。
「それと、亡くなった方のギルドカードを持っていって報告すれば、正当防衛が認められると思います。この者達の悪行は知れ渡っていますし、きちんと整合性が取れればギルドも納得してくれるでしょう」
「へえ~、そうなのか」
こいつ等からも記憶を読み取っていたようで、既に俺の知らない情報を持っているみたいだな。
「はい、それにきちんと報告しておけば、この者達の持ち物を私達が所持する正当性が得られます」
「ああ、それもそうか!」
「この者達は大分貯めこんでいたようですし、精々私達の役に立ってもらいましょう」
そういうドライな一面も持ち合わせているのか。
まあ長の長姉という立場なのだから、里の運営の仕方や政を見る機会も多かったのだろう。
現実を直視し、やるべき事をやる、もらえる物はもらう姿勢は高ポイントだな。
それとすっかり時間が経ったせいか、腹が減ってきたな。
「それじゃあ、さっさとやることやって街に戻ろうか!」
「ええ、旦那様のご随意のままに」
手早く荷物をかき集めると隠し部屋を出、街へ戻るために並んで歩きだした。




