40:新しい仲間たちが増えた
リーリアにスキルを譲渡した翌日、シルキーが目覚めた。
シルキーは女性の姿をしており、家事などを得意とするモンスターである。
生活魔法を扱うことが可能で、料理や掃除など、モンスターなのに人間より優れた仕事をするとか。
禿鷲のダンジョンでは、家事関連の下働きをさせられていたらしい。
その割に、掃除が行き届いていなかったが……やる気の問題かもしれない。
「開放してくださり、ありがとうございます」
ふわりと微笑む彼女は金色の髪を持つ細身の美人で、私たちに感謝している様子だ。
モンスターは人間より回復が早いようで、もう普通に起き上がっている。
「怪我は大丈夫かしら? 元の住み処に帰れそう?」
「それが……」
オレンジ色の瞳を潤ませたシルキーは、顔を曇らせつつ答える。
「私の暮らしていた住み処は禿鷲の魔王に壊されてしまったのです。シルキーは建物に居着くモンスターなのですが、もう私に帰る場所はありません、これからどうすればいいか……」
途方に暮れた彼女を見て、私は控えめに提案した。
「もし良ければ、行き場所が見つかるまで、このダンジョンに住まない?」
「えっ……ですが」
「ダンジョンの人数が増えたから、私一人じゃ手が回らなくなりそうで、家事ができる人を探していたの。カルロは箱入りだし、馬たちはワイルドすぎて料理や掃除ができないし。リーリアには別の仕事を担当してもらいたいから」
すると、徐々にシルキーの顔に笑みが広がり始める。
「わ、わかりました! 次の家が見つかるまでお世話になります! 実は、このダンジョン……少し気になっていたんです! 珍しい建物があるし!」
珍しい建物とは、カフェやホームセンターもどきを指しているようだ。
こうして、シルキーもダンジョンの一員に加わった。
次に目を覚ましたのは白い雌のウルフだ。彼女は、ブルーノが付きっきりで様子を見ていた。
同じ種族だから、仲間意識があるのかもしれない。
白いウルフはブルーノと同じでまだ言葉を話せないようだった。
でも、ブルーノを見ているうちに、なんとなくウルフの気持ちがわかるようになってきたので、困らないと思う。
さらに、続いてスプリガンが目を覚ます。
少年姿の彼は、こう見えて私より年上だ……と、シルキーが言っている。
スプリガンは人間である私を警戒していたが、シルキーと仲が良いところを見て少し友好的になった。このダンジョンについて説明すると、彼は小さく瞬きした。
「お前、ここのダンジョンのヌシなのか……」
「ええ、そうよ。まだ新人だけどね。向こうにいるのが、魔王のカルロ」
離れたところで、カルロは私を見守っていた。
スプリガンも行き場所がないらしく、しばらくうちのダンジョンに所属することになった。




