表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/44

32:そんな仕様は聞いていません!

 少し重い足取りで、私は魔王の部屋の扉を叩く。

 そろそろ彼も落ち着いたかも知れないという希望的観測を胸に、私は入口で待機した。

 魔王の部屋は私とカルロが二人で使っているので、本当は入ってもいいのだけれど、なんとなく気が引けたのだ。

 やや間を置いて、ゆっくりと内側から扉が開いた。


「モエギ……?」


 大理石風の床の上で、カルロが戸惑いがちに私を見ている。

 まだ元気がなさそうだけれど、布団からは出ていたようだった。豪奢な寝台は綺麗に整えられている。


「カルロ、ちょっと話があるんだけど」


 キョトンとした顔でこちらを向く魔王は、なんだか幼く見える。妖艶な姿と不安に揺れる瞳がちぐはぐだ。


「あのね、カルロ。その……草原にいた馬種の皆をダンジョンに迎え入れたの」


 完全に事後報告だった。無断で動いたことにカルロは気を悪くするかもしれない。


「は……? あいつらを!?」


 予想通り、カルロは眉根を寄せて難しい表情をしている。


「ダンジョンに所属している方が馬種たちは安心するんだって。カルロや私を害する気はなさそうだったから、受け入れちゃったの。ヴァレリたちの住居も草原に作ったよ」


 話していると、チリが部屋に乱入してきた。


「モエギ様のスキル『勧誘』をタップしましたので、簡単にこのダンジョンを裏切ることは出来ないと思いますよ」

「その『勧誘』は、他のモンスターをダンジョンの所属にするというものだよな」

「はい、そうです。強制的にダンジョンに帰属させます。もし、モエギ様に無断で裏切るようなことがあれば……」

「あれば?」

「恐ろしいペナルティーが降りかかるでしょう……と、創世神様が言っておられました」


 チリの言葉に、私は飛び上がった。そんな話は聞いていない。


「えっ、えええええーっ! 私、そんな話はヴァレリたちにしていないわよ!?」

「裏切らなければ大丈夫なのです。それに、ダンジョンを離れたい場合は、モエギ様を通して『勧誘』を解除してもらえば良いだけですから〜」


 なんともお気楽に言ってくれるヒヨコだ。そして、『勧誘』が解除できる仕様だと、今初めて知った。

 私を騙す気はないだろうが、チリは聞かれなければ答えないという節がある。

 他にも知らない仕様が隠れていそうだ。


「チリ、他に私の知らない仕様があるなら教えてくれる?」

「ワカリマセン、オモイダセマセン……」

「また、スマホの自動音声みたいになった」


 都合が悪くなると、チリはスマホの真似に走るらしい。

 創世神が絡んでいるとすれば、答えてはもらえなさそうだ。チリはどこまでも、大きなヒヨコに忠実である。


「まあ、下克上される心配はないのね?」

「そういうことです。モエギ様」


 それを聞いたカルロだが、苦い顔のままだ。


「カルロ、勝手に判断してごめんなさい。でも、ダンジョンの仲間が増えるのはいいことだと思ったのよ。水蛇のダンジョンの件もあるし……」


 フィオレは私を勧誘したがっている上に、このダンジョンを支配下に置くことも考えていそうだ。


「モエギは……あの雄馬を気に入っているのか?」

「ヴァレリのこと? 前より仲良くなったと思うけど」

「そ、そうなのか……」


 カルロは、何かを思い悩んでいるように見えた。


「引き続き、私はレベルアップと結界の強化を頑張るわ。そういえば、馬たちを仲間にしたら、一気にダンジョンのレベルが上がったの。ダンジョンレベルがレベル20になったし、私個人のレベルは50まで上がって……」

「モエギのスキルは一体……」


 カルロは、茫然自失といった様子で天を仰いだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ